帰りたい想い
報告書をまとめたい。
今の切実な気持ちだ。
「おい、いつまで黙ってるつもりだ?」
「……」
「ちっ」
「まぁ、落ち着きなって。相手は子どもだよ?」
ねぇーとハンジが顔を覗けばサラは少し距離をとった
「落ち着いていられるか。時間がねぇんだよ」
「たしかに、こんな薄っぺらい内容じゃ上に提出できないよね」
保護したあとにわかったことは、子どもの名前がサラと言うことと食べていたもの
巨人をままと呼んでいる事くらいだ。
「言わねぇだけか、知らねぇのかはっきりしろ」
ドンっと机を蹴ればびくりと肩を揺らした
「乱暴だなぁリヴァイは」
「うるせぇくそ眼鏡」
「……たい」
「あ?」
「かえり…たい…」
ハンジと目が合った
サラはうつむきこちらを見ない
その時ノックの音が部屋に響く
「なんだ、みんな居たのか」
部屋に入ってきたのはエルヴィンだった。
「ちょうどよかった」
足を運びサラの前に立つ
「風呂に入れてもらったんだね」
頭を撫でればサラはエルヴィンを見上げる
「汚なかった時は昔のリヴァイを思い出したが…やっぱり女の子の方が可愛いな」
「……知ってたのか?」
「どうみても女の子だっただろう」
はぁ、とため息が出た。
知ってて俺に任せたのか?と問いただそうかと口を開いたが先にエルヴィンが口を出した
「明日、サラを審議にかけるよ」
「え…?どういう事だい?」
「早いものでもう上に話が持ち上がっていてね」
「…………」
「上は外からの訪問者に気が気でないらしい」
にこやかにエルヴィンは笑っているが、その顔には何かを含んでいるように思えた
「小さな君には酷かもしれないが、大丈夫だ」
「…か、えりたい」
「……」
「かえりた、い」
「あの場所にはもう帰れない。あそこは危ないんだ」
「あぶなく、ないもん」
「君の帰る場所はここになる」
「ちがうもん」
「すぐ慣れるさ」
エルヴィンはそう言とハンジと共に部屋を出た
「あんなにはっきりと言わなくても…」
「嘘をつくのも可哀想だろう」
「そうだけどさぁ……。エルヴィンなにか策はあるのかい?」
「……いや、ないな」
「………(珍しい)」
「だが、やってくれるさ」
「なにを…?」
答えは返ってこなかったがただエルヴィンは笑っている。
二人は静かに廊下を進んだ。
二人が居なくなるとなんとも気まずい空気が流れた
「……」
リヴァイはそれに気付かないように手元の書類を見る
「…………」
先に沈黙を破ったのはサラだった。
「…わたし、なに、されるの?」
「………さぁな」
ぎゅっと服を握っているサラ
泣くだろうか。不安だと言だろうか。
面倒だ、と感じたとき意外な言葉が返ってきた
「しらないことは、こわいもんね」
「……何が言いたい」
「……かえるには、どうしたらいいの?」
「…そんなにあそこが良かったのか?」
独りぼっちで、風呂にも入れずまともな物も食えない環境。しかも巨人にいつ襲われるかわからない、そんな中に帰りたいというのか?
「エルヴィンの言う通り、帰るのは無理だ」
「……」
「ただ調査兵団に入れば、また外に行く機会は十分あるがな」
「…ちょうさ?」
「あぁ。俺たちの兵団だ。明日は…憲兵団が来るだろう」
「けん?」
「憲兵団はもっと奥地だ」
「…………」
顔を見れば無表情だった。
子どもは本当にわからないとリヴァイは心底思う。
「今日はもう寝ろ」
空気に耐えられなくて布団を投げて外に出た。
少し肌寒く感じた外は頭を冷やすのに良かった
帰りたい想い
(あいつは、何考えてるのかわからねぇ)

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