出会う
「ここには巨人は居ないみたいだね」
何度目か分からない壁外調査。
ハンジは残念そうに言った。
「つい最近まで人が居たみてぇだがな」
「にしてもありえない」
ここは壁外だ。
人間が住める環境ではない。
つい先日、壁外で小さな村が発見された。人類を守る壁からそう遠くないところに民家は確かにあったのだ。今日はそこの調査だった。
すでに多数ある家は壊されており、巨人から身を守るために作ったのだろう低い壁は崩れ落ちていた。
(こんな壁。無意味だな)
低い壁と言っても20メートルはあるように見えた。崩れていてわからないが実際はもっと高かったのかもしれない。
「追放者達が作ったのかな、なんてー」
笑いながら話すハンジにため息が出る
重大な罪を犯したもの、重要な機密を知ってしまったものは密かに壁外追放として壁の外に送っていると聞いた事がある。
ただの噂であり、追放された所で巨人に食われるのが落ちでそれを証言する人は居ない。だからこそ信じられなかった。
「俺は奥を確認する」
「はいよー」
馬を走らせること数分、木の実が地面に転がって居るのが見えた
(なんだ…?)
いくつかは腐敗が進み虫が飛んでいる。リヴァイは眉間の皺を濃くしてまわりを見た。
動物がここを餌場にしたのだろうか。
周りには果物がなるような樹はない。
(わざわざここでは食わねぇよな、普通)
果物を蹴る。汁が飛んだその時――‐
ガタッ
「!!」
半分壊れている家。
中に人が居た。
(な…)
「だ、れ?」
小さな小さな声だった。
その人間は壁に手をついて、そのふたつの目をキョロキョロと動かしている
暗い部屋の奥から少しずつ近づいてきて姿が見えた
「てめぇ、なんでこんな所に居る」
「??」
そいつは小さな子どもだった。
「人間か?」
人間がこんな所にいるはずが無い。ここは壁外だ。
「居るのはお前だけか?」
「…みん、な、でた」
「?」
「ま、まは、いる」
「…(もう一人、生きている人間がいるのか?)」
まわりを見てもそれらしい人影は見当たらない
子どもに近づけば距離を取るようにそいつは一歩下がる。
「お前には聞きたいことがある。」
自分の背丈の半分も無いだろうそいつは顔色一つかえずに首を傾げた。
距離をつめようともう一歩近づいたときだった。
「!」
馬が鳴いた。自分の愛馬だ。
子どもはその鳴き声と同時に外に駆け出したためリヴァイも続く。
そこには巨人が居た
「なっ、馬鹿っ」
子どもが近づこうとしたため腕を掴みアンカーを握りなおして戦闘態勢に入る
「ちっ…」
すぐに周りを見るが、こいつ以外は居ないようだ。
巨人は女型に見える。
長めの髪が余計珍しく思えた。
(なぜ、動かない…)
人間を見つければ巨人は襲ってくる。だがこいつはその場から動かなかった。
ただ静かにこちらを見ている
(奇行種か…?)
どちらにせよこの人間を守るのが優先と判断し、リヴァイは子どもを脇に抱えた
馬に跨り腹を蹴る
巨人とは反対方向に向きなおし馬を走らせた
近づいてきて居ないか一度振り向けば、巨人はその場でただただこちらを見ているだけだった。
(あれは…)
巨人の手には、あの地面に落ちていた果物が握られていた
(そんなこと、あるわけがねぇ)
リヴァイはまた舌打ちをして馬の速度をあげた
出会う
(なんだあいつは)

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