逃げられない境遇
サラの体力作りは始まったのは次の日からだ。
時間が経てば体力なんてつくものだ。サラは初めて走ったあの日より確実に体力を付けていった。
ただそれはリヴァイと行う体力作りだけのおかげではない。
ぱたん、
今日もまた朝方に扉の閉まる音がした
(行ったか…)
朝同じような時間にサラは部屋を出る。
一度だけ後をつけた。
こんな朝早くにどこに行くのか気になったのだ。
サラは念入りにストレッチを行いその後走りに行った。
肌寒い外を。
(……)
きっと兵士に慣れないかもしれない、と不安なのだろう。
(あいつには、それしかないからな)
母と呼ぶ巨人の元に行きたいために懸命に頑張る彼女。
誰も居なくなったあの場所を故郷と呼び、帰りたいという彼女を哀れだと思う。
そんな事をしてもなにも良いことがないというのに
リヴァイは静かに部屋に戻った。
しばらくしてサラも戻ってくる。
きっとこの後何もなかったかのように過ごすのだろう。
「リヴァイさん?終わりましたよ?」
「…………あぁ。水分を取れ」
太陽が真上にある。
サラは指示の通りに水筒の水を飲みはじめた
「今日は立体起動を使う」
「はい」
「使い方はこないだ説明した。その通りに行え」
「はい」
借りてきた立体起動をサラに渡す。
リヴァイが教えたのは最低限の使い方だけだ。新兵がはじめに行うバランス、体重移動を確認するあれは行っていない。
だからできるはずないと思った。
「どういうことだ」
「え?」
できないでまた落ち込んで兵士になるのを諦める、そんな事になると思った。
それなのにサラはそれを裏切ったのだ。
「俺以外にそれの使い方を習ったか?」
「習ってません」
サラはいとも簡単に宙を舞ったのだ。
「ただ、なんとなく…こうかなって」
「………」
死なせない為に兵士にさせよう。エルヴィンの話でそう思ったのに、心のどこかでやっぱり諦めて欲しいと思って居たのだ。
リヴァイはため息をつく
「ダメでしたか」
「嫌な才能だな。訓練を始める。股のベルトはもう少しキツくしろ」
「はい」
逃げられない境遇
(腹、くくるしかねぇな)

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