前途多難
リヴァイは目の前の少女の前でため息をついた。
「お前、ふざけているのか?」
「…はぁ、っ…すみま、せん」
サラは地面に大の字になって転がっていた。
小さな体は大きく上下に動いてる。
「っ、はぁ、はぁ」
数分のジョギング程度の運動だったのだが、サラの息はあがっている。
「よくそんなんで兵士になると言えたもんだ」
「……は、っ、はぁ」
まぁ、今まで体を動かす機会が無かったのだ。当たり前といえば当たり前だが。
この結果は思ったよりも悪いらしい。リヴァイの眉間の皺を見てサラはごくりと唾を飲み込んだ
「何かを教える前に体力作りだな」
腰に手を当てたリヴァイが歩き始めたため、サラは急いで立ち上がりリヴァイに続く。
前髪は汗で貼りついており、まだ息も整ってはいなかった。
(まさか、ここまでとは)
あれだけ兵士になると意気込んでいたのだ。それなりに粘ると思っていたが早くも彼女は音を上げた。いや、音は上げていない。彼女の口からは息しか漏れていないのだから。
ただ、やはり10代の子ども。しかも走り回って過ごしているわけではない。サラがこの1年でできるようになったのは字を書けるようになった事と掃除が完璧にできるようになった事くらいだ。
まず基礎がないのに他の事を教えられるはずがない。
どうするか…と考えていると不意に後ろから聞こえていた小さな足音が聞こえなくなる
「なにやってる…」
後ろを見ればサラが服の裾をぎゅっと握って立っていた。
「……」
「サラ」
名前を呼べば俯いていた顔を上げる
「わたし、兵士に…なれないですか…??」
「…このままならな」
「っ、」
どうしよう!まさにそんな顔をしていたサラをリヴァイは横目で見つめる
「向いてないんじゃないか?」
「がん、ばります」
「頑張ってもできない事はある」
「い、や」
「こんな体力じゃ壁外でやっていけない。諦めて生産者に―‐」
「いやっ!!絶対っ!」
ブンブンと首を振るサラ
「……」
「諦めるなんて、できない!」
なにをそんなに意地になっているのかと思う。
サラは自分の故郷に帰りたいのは十分知っているが。
「………今度は、諦めたく、ないよ」
彼女はそれ以上何も言わなかった。リヴァイはそのまま足を進める
(…諦める、だと?)
ツカツカと歩くリヴァイ。
後ろにはすでにサラは居なく、舌打ちをした。
(何を諦めてきたんだ、あいつは)
母親の事か、故郷の事か、思い付く事はいくらでもある。
(どうするか)
後ろを振り向けばサラはまだそこにいる。
リヴァイは気にせずに足をまた一歩踏み出した
前途多難
(体力作りから初めないといけないとはな…)

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