金の髪の男
いつもリヴァイの言うことを聞くサラ。
だが今日は違った。
「………サラ、いい加減にしろ」
「…………」
「サラ!!」
びくっと肩を揺らしたサラはリヴァイの方を向いた
「だって…!だってぇ……!!」
「これは規則だ。ルールなんだ諦めろ」
「うぅー!」
「はぁ。なんだその顔は」
頬を膨らましたサラ。
その頬をつつくと弾力がありリヴァイの指を跳ね返した。
「はやく、へいしに、なりた、いん、だもん!!」
途切れ途切れに出てきた言葉には怒りが含まれていた。
「だから、12歳になんねぇと」
「私12歳だ、もんっ!」
「嘘をつくな。10歳って言ったろ」
「12、だもんっ!」
つい先ほどの話だ。
早く兵士になって調査兵団に入って故郷に帰る。これがサラの夢であり生きる希望だ。
いつ兵士になれるの?という質問にリヴァイは12歳で志願できる事を伝えた。
それからの会話だ。
「3年間訓練を受け15歳で調査兵団だ。後5年なんてすぐだろ」
「遅いもんっ」
「ちっ、わがまま言うんじゃねぇよ」
「リヴァイさんなんて、だいっきらいっ!!!」
サラは走って部屋を出ていった。
荒々しく扉は閉められるのを見てリヴァイはため息をついた。
「めんどくせぇ」
静かな部屋に椅子の座った音がギシリと鳴り響いた
***************
走って部屋を出たサラ。
「ここ、どこ」
一心不乱に走っていたからだろう。いつもと知らない道になっていることに気付かなかった
「どうしよう…」
知っている道に出れるように足を進めるが一向に知らない道が続くだけだった。
「うぅ」
「あれ?君は…」
「!!」
後ろから声が聞こえてすぐに振り向く。
「だ、れ…」
「俺はエルド。君はリヴァイ兵長に保護されている子だろ?」
そこに居たのは金の髪を後ろで束ねている男だった。
「名前は?」
「……サラ」
「そう。サラ、よろしくね。こんな所で何してるんだい?」
「道が、わからなくて…」
「あぁ」
だからキョロキョロしてたんだね、と少し笑った後エルドは指をさした
「案内するよ。おいで」
「!…ありがとう」
良かった、と安心感が広がりサラはエルドの後を追った。リヴァイよりも背の高いだろう男はサラの隣をゆっくりと歩く。
だが、少し歩いたところでサラは立ち止まった
(あ、私…帰れない…)
「どうしたんだい?」
「私、帰れないの…」
「??」
サラは喧嘩をした事をエルドに伝えた
「そうか、サラは調査兵団に入りたいんだね」
「うん」
「でもリヴァイ兵長の言うとおり今はまだ無理だな」
「……」
「若いんだし、今は急がなくていいんじゃないかな?」
「…………」
またぷくっと頬を膨らましたサラ
止まった足を動かそうとエルドが手を繋いで歩きだす
「君はいい兵士になるよ」
理由はわからないが、彼女の決意は固いようだ。
少し前、リヴァイ兵長が子どもを保護したと聞いて正直驚いた。
彼は子どもが嫌いだと思っていたからだ。
実際にサラに会ってみて余計に想像ができなくなった。リヴァイ兵長はこの子の管理と躾を行っていると聞いてもっと感情の少ない、子どもらしくない子だと勝手にイメージしていたからだ。
(だってあのリヴァイ兵長と一緒に過ごしてるんだ)
サラの不安そうな目とあった
「……リヴァイさん、怒ってるかなぁ」
「んー、どうだろう」
「私、大嫌いって言っちゃったの。リヴァイさんも私の事嫌いになっちゃったかなぁ」
じわりじわりと涙を溜めだすサラ。
なんだ、普通の子どもじゃないかとエルドは少しの笑みを浮かべてサラの頭をなでた
彼女の中では、兵士に早くなりたいと言う気持ちよりもリヴァイ兵長に嫌われたかどうかの方が重要になったらしい。
「ちゃんと謝れば許してくれるさ」
兵長も大人なんだし。と思いながら廊下を曲がった時だ。
「あ、」
前から腕を組んで歩いてくる兵長が見えた。
心なしか眉間の皺がいつもよりも濃い気がする。明らかに不機嫌そうだ。
その兵長を見たサラはすぐにエルドの後ろに隠れた
「エルド…」
「(ひぃ!声低っ!)は、はいっ」
「そいつが世話になったな」
「……いえ」
サラを見ればエルドのズボンを少しだけ掴んでリヴァイを見つめている
「迷子になっていたので」
「そうか。勝手な行動をするな」
「……」
まるで主人に怒られた犬のようにしゅん、としてしまうサラ。それを見て黙っていられなかった
「サラもまだ小さいですから…」
「関係ない」
「……すみません」
「サラ」
目だけをリヴァイに向けたサラ。そこには眉間の皺の無くなったリヴァイが居た
「帰るぞ」
「…!」
リヴァイはそれだけ言うと今まで歩いてきた道を戻る。
サラはそれが合図だったかのようにリヴァイのもとへ走りだした。
「……」
リヴァイの片腕に抱きつくサラを見てエルドは深いため息が出てしまう。
「兵長が本当に子どもを、ねぇ」
抱きつくあたり彼女は兵長を信頼しているんだろう。
(なんとも不思議な光景だ)
金の髪の男
(リヴァイさん、ごめんなさい)
(……わかればいい)
(本当は嫌いじゃないです)
(……………そうか)

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