夜が来るまでに考える時間はたっぷりあった。
まず自分の状況だ。
多分会社で倒れた際、私は気を失った。
その間に拉致されて、どこかの家に連れてこられた。
その間の時間が短く感じられるが、きっと気絶してたからだ。
私は意識を取り戻してアレに遭遇した。
アレはどこかの研究施設の実験体で、失敗した人間。
だから巨人化してしまった。
その事がバレるとまずいため、私は監禁されたが、拉致した彼の彼女に顔がたまたま似ていた
(…よし!完璧!)
これが私の考えたシナリオだ。
ちょっと漫画じみているのが難点だが、これでなんとか辻褄があう……はず!
(後は、今から逃げ出すのみ!)
私は拳をぎゅっと握った
きっと皆心配している。急に居なくなったのだから。
(早く帰らなきゃ……)
早くこの状況から脱退したい。
無意味に不安になるのは精神的にも辛いのだ
「待たせたな」
鍵の開く音と同時にリヴァイさんが入ってきた
「外は寒い。これを着ろ」
頭からフード付きのコートを被せられる
「あ、あの…それは?」
彼の足には鉄の固まりといくつものベルトがついていた
「外にでるのに必要なものだ。エリ、行くぞ」
手を差し出されて私はそれに応じる
(やっと、やっと帰れる)
部屋から一歩出て柔い絨毯を踏みしめた
*****************
「ひっ、ひゃ!!」
「エリ、手を緩めろ。苦しいだろうが」
「ご、ごめんなさっ!いっ!でも!!ひゃぁ!!」
浮いたり、落ちたりを繰り返すこれは一体何なのだろうか!
なにか細いワイヤーが出てるのが見える。まるで掃除機のコードをしまうみたいにしてワイヤーを回収するたびに身体は浮いた。
(なんでこんな目に…!!)
それは部屋を出てすぐだった。
彼に連れ出されて私はいきなり抱き寄せられた。
しかも、小さな子どもがお父さんにされるような、片手で私の膝裏を支えている抱き方だ。
恥ずかしい!と思う反面、よく片手で自分を持てるな…と驚いた。
「しっかり捕まってろ」
「え?」
その瞬間身体が浮いた。
ジェットコースターに乗ったみたいに内臓が浮く感覚。
私はこれが苦手だ。
「ひぃ!もう、降ろしてよぉ!!」
「あと少し我慢しろ」
「む、無理っ!」
怖すぎてリヴァイさんの首に捕まる。
サラサラと風に揺られる彼の黒髪を見ながらまた落ちる
(し……しぬっ!!)
「着いたぞ」
動きが止まって私はゆっくり目を開ける
暗いそこは風が強く、深くかぶったはずのフードは音を立てて頭から離れた。
リヴァイさんが私を降ろして、私は久しぶりに足を地に着けたのだが私は足が竦んでその場に座り込んだ
「な、にこれ…」
足が竦んだのはさっきの浮遊感が抜けなかったからではない
「ここ…どこ…なの…??」
目の前には見たことの無い町が広がっていたからだ
足元を見るとコンクリートのようだが、少し遠くに大砲があるのが見える
(なんなの…??)
今自分は高い場所に居るらしい。見下ろす町にはポツポツと明かりが見える。
でも私が居た町とは違う。あまりにも明かりが少ないからだ
「ここが、人類が生きていける場所だ」
リヴァイさんが真っ直ぐ前を見て口を開いたが、私はその言葉を聞いていなかった
町は静かだった。夜だからだろうか。雲の少ない空から月の光だけが漏れて町を照らす。
いくつか煙突から煙が出ている。テレビでしかこんな町見たことない。外国の田舎のような町だ。
そして自分の足場のこれはその町を囲むようにして建てられている。まるで誰も入れないよう壁で囲ったみたいだ。
こんな大きな壁があるなんて今まで知らなかった。
いや、違う。きっと―‐
「嘘っ、嘘よっ」
「エリ?」
「こんなのっ、嘘っ!ここどこなの!?帰してよっ…!!帰しっ、て……!!」
ここは私の居た世界じゃないのかもしれない
届かない叫び
(溢れた涙は止まらなかった)
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