「彼女が死んだ事はとても残念で、それでいて死ぬことが重要だった」
ポツリポツリとただの昔話をするような落ち着いた口調でハンジさんは話しだす
「リヴァイはとても優秀でね。人類の中でも最強に強いんだ。そして、リヴァイの強さは失うものが無い所だった」
もちろん仲間が亡くなったときには胸を痛ませるよ?と付け足すように言ったハンジさんは私の顔をまじまじと見る
「でもね、リヴァイも人の子だ。彼はエリに恋をしてしまったんだよ」
初めは小さなことだった。私たちも目をかけてる後輩かな?くらいにしか感じて居なかった。
最初に異変に気づいたのは壁外調査に行ったときだ。
エリは新人で比較的安全かつ経験豊富な先輩が居る所につけようとした。
しかしリヴァイは直前で自分の班にしようとしたんだ。
皆驚いたよ。急な変更は確かにある。でもエルヴィンの指示に従うリヴァイにとって直前の変更はとても珍しいと私も感じた。
『エリは俺の班に入れる』
『急な変更は彼女にとっても良くない。それにあの班には彼女の知り合いも居るみたいだ。このまま行くぞ』
『………』
そのまま壁外調査は続いて巨人が彼女の班のそばに来たときだった。
『あれ?リヴァイは??』
彼は自分の持ち場を離れて彼女のもとへ行っていた。
『なぜあんなことをしたんだ!』
『俺の班は優秀だ。俺が居なくなっても問題ないだろ』
休憩中も、壁外から帰ってきても彼はエリを側に置きたがった。
彼女が居ないと機嫌は悪くなる一方で困っていたんだ。
「でもそんなのは可愛いものだった」
ギリッと掴む手に力がこもる
「私たちが一番恐れたのは………」
重要な時にエルヴィンの指示より彼女を優先させないか、と言うことだ
「彼には人類最強で居て欲しかった。それが全員の期待であり、事実であり、1人の女に自惚れ1人の女を守る人ではいけない」
全ての人類を守る人で無くては
「……そんな理由でエリさんを殺したの……?」
「手は早めに打ったほうがいい」
「人類も彼女も守ればいいじゃない…!」
「少しでも人類より彼女を優先させられたら困る!」
「だからって殺すことないじゃない!!」
「君はリヴァイのあの姿を見てないから言えるんだ!!」
ギリッと掴む手がきつくなり私は眉間にシワを寄せた
「あんな、執着するリヴァイを見たら…どうにかしようと考える」
「そんなに、好きだったの…?」
「あんな部屋を作る位にはね」
「………………」
確かにあの部屋は用意されていたもので1日2日でできる様なものではない
「最初はエリを退団させるとか、田舎に返すとか案が出たしもちろん実行しようとした。でも彼女だって意思がある。巨人への憎しみだって」
その案はうまくいかなかったんだろう。ハンジさんは一度深呼吸をして呟いた。
「…簡単だったよ。彼女の装置の部品を1つだけ盗むのは。巨人との戦いになったときに、彼女は飛べなくてそのまま食べられた」
「酷い……、酷すぎるよ…!!」
「私たちは譲歩した。でも彼女は納得しなかった……全人類と、1人の命。どちらが重要かわかるだろ?」
狂っている、と口が勝手に呟いた
「その後はうまく行っていたのに、なんでまた君は現れたんだ…!!!」
「っ離して!」
腕を引っ張られまた私を持ち上げたハンジさんはそのまま宙を飛んだ
(どこにむかって……)
浮遊感が無くなって次に地面に下ろされたのは、前にリヴァイと来たあの壁の上だった
「………エリには悪いことをしたと思ってるよ」
「やめて」
「でもこうするしかないんだ」
「やめてっ!」
私は壁の縁に立たされた
ハンジさんの向こう側から日が射してきたのが見える。もう夜が明けるようだ。
「私を…殺すの…??」
口から出た言葉は震えていた
「全人類のために、わかってくれ」
どんっと身体を押される
よろけてしまった足は地面に着地することなく身体の重さで後ろへと倒れていく。
『お前が思っているよりも外は危ない』
『外は敵だらけだ』
『お前を守りたいんだ』
リヴァイのあの言葉は巨人に対する言葉だけじゃなかった
(きっと彼はわかっていたんだわ)
エリさんが亡くなった理由を。
(リヴァイ、貴女は彼らからも守ってくれようとしたのね)
涙がポロリと出て来て、あぁ私このまま落ちて死ぬのだと悟った
(ごめん、リヴァイ)
ハンジさんの見開いた目がこちらを見ている。自分で落としたくせに何を驚いているんだ、と思った時柔らかな衝撃が私を包んだ
「……えっ」
「必ず守ってやるって言っただろ?」
低く響く聞きなれた声。
「リヴァイ…!!」
シュルシュルと勢いよくワイヤーが回収され私たちはあっという間にその場から離れた。
彼女は二度殺される
(私、あなたに謝らなくちゃ)
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