彼は全てわかっていて私をここに連れてきたのだとわかり、今まで何のために偽っていたのかと思うとどっと疲れが押し寄せてきた。
「エリ、俺はお前を死なせたくないんだ」
「……自由が無いなんて死んでるも同然よ」
彼が私の上から退いてからも私の目から涙は止まらなかった
「私、リヴァイがいい人だと思ってたのに」
「……」
「ひどいよ」
「エリいいか?外は敵だらけだ。本当は見つからないのが一番よかったんだが…」
敵だらけもなにも巨人は居ないと教えてもらった
「必ず守ってやるからな」
そう言い残すとリヴァイは部屋を出ていってしまった
(守るじゃなくて、逃がさないからなって方が似合ってるよ)
はぁ、と短いため息をついて私は起き上がる。
鉄格子から外を見上げればなんとも美しい赤く焼けた空が私を照らしてくれていた
「私、どうすればいいのかな」
ポツリと呟いた言葉は空気に溶けていってしまった

********
ドカン!と大きな音がして私の肩は跳び跳ねた
「な、なに!?」
「ふーっ!ちょっと強引になっちゃったけどまぁいいか!」
ベットから入り口の方を見ればホコリと共にドアが壊れていてそこから眼鏡をした人がこちらを見ていた
「………久しぶり、かな?エリ」
「あっ」
声を聞いてついさっき来てくれた女性だとわかった。確か名前はハンジさん
「約束通り君を助けに来たよ!」
私は心底安心した。
リヴァイには気まずくて会いたくなかったし、やっとこの生活に終わりが見えたからだ
「時間がない。さぁ、早く行こう」
手を捕まれて引っ張られるままに部屋を出た
本当に巨人は居ないのだろうかと少し不安になったが外に出れば月が廊下を照らしているだけだった
(もう夜だったんだ…)
「君を今からエルヴィンの所に連れていく」
「誰ですか?」
「私の上司だよ」
「そこで君をどうするか確認する」
カツカツと早足でハンジさんは歩く。
それについていくのが精一杯で少し息を切らした。
「あの、自分で歩けますので」
「時間がないんだ」
腕は未だに握られたままで私はその力強さに少し困惑していた
「リヴァイが来る前に済ませたい」
あぁ、そういうことか。リヴァイが来たらまたあそこに戻らされるから急いでいるのか。納得して私も少し小走りして彼女について行く
「…リヴァイは今どこに?」
「きっと血眼になって私を探してるだろうね」
「えっ、じゃぁ見つかったら…」
「考えたくもないよ」
ははっと乾いた笑いをしてハンジさんは1つの扉を開けた
「お待たせ」
「….....」
扉を開けるとそこには金髪の男性が居た
この部屋は倉庫みたいで月明かりに照らされて埃が待っているのが見える
「………なぜ」
部屋の真ん中で彼は目を見開いていた
「なぜ生きている」
不思議そうに手を伸ばしながら瞬き一つしないで近づいてくる彼が少し怖かった
「っあの、私、多分皆さんの知っているエリさんとは違うんです」
「………………」
「信じてもらえないかも知れないですが…」
「……どうするエルヴィン」
私の言葉を遮るようにハンジさんはエルヴィンと呼ぶ彼に目を向ける。
「リヴァイが彼女を監禁していたとすれば、執着しているということだ。同じ二の舞になる前に処分した方がいいな」
「……わかった」
「先ほどリヴァイが私の部屋に来たと知らせがあった。急いでくれ」
まるで私が居ないかのように話が進められて私は二人の顔を交互に見て終わってしまった
(今、処分って聞こえた…)
ざわざわと嫌な感じがする
「行くよ」
ハンジさんが私をひっぱる
そして、勢いよく私を持ち上げるとふわりと浮遊感が襲った
「わっ」
前に一度味わったそれはやはり苦手で私は叫ばないように口を押さえる
またあのよく分からない機械で私たちは空へと舞った
「舌、噛まないようにね」
「あ、あの、私はどうなるの」
「……………」
「さっき、処分って、聞こえて」
ざわめく心臓をぎゅっと握りしめるように胸の前で手を握ったがなにも変わらずにさっきよりも激しく心臓が動き始めた
「……何も知らないままなのも可哀想だから教えてあげるよ」
いくつもの同じような赤い屋根の中の1つに立ち止まってハンジさんは私をおろした。腕はまるで逃がさないかのように握られたままだ。
「エリは死んだ。人類のために死んだんだ」
「巨人と戦って……?」
強い瞳がこちらに向けられる
「私たちが、死ぬように仕組んだ」
凛とした声が響いて私は少し空いた口から小さく息を吸った
聞きたくなかった真実は
(エリさん、貴女に一体なにがあったの?)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -