初めて居るとも居ないともわからない神とやらに感謝した。
あの日壁外調査で俺はあいつを見つけた。
愛していた女を見つけたんだ。
(あいつは死んだはずだ…)
顔はそっくりだった。
髪の色は違った。あいつは黒い髪だった。だがこいつは茶色だ。服装も見慣れないものだった。
巨人を倒して彼女の名前を呼ぶと女は気絶した。
抱き寄せて見ればやはり彼女そのものだ。
俺は死体を包む用の白い布に女を丁寧に包んだ。
ちょうど目の前で1人食われたから、そいつだと言って死体に混ぜる。
その後は楽なもんだった。
壁外調査から帰ったときは各自忙しい。あの緊張しっぱなしの外から解放されるのだ。
誰も他のやつらなんか気にしていない。
俺は女を自室に運んだ。
「エリの為に用意した部屋を残しといて正解だったな」
小さな隣の部屋はあいつの為に用意したものだが、使う前に本人が居なくなってしまった。
死んだのだ。目の前で。
立体起動が故障してうまく逃げれずにあいつは食われた
(エリ、エリ、エリ、エリ、エリ、エリ!!!なんで!!!お前なんだ!!!!)
己の力の無さをあれほど感じたことはない。
エリが死んでから3ヶ月。お前を忘れたことは一度も無い。布を取り、女を見る
(綺麗な手だ)
戦ったことのないような、陶器のように滑らかで綺麗な指
健康的な肌色。
どれもエリにそっくりだが、その1つ1つはあいつ以上だった。
彼女の身体は傷だらけであり、女性ながらも筋肉のあるしなやかな身体だった。
だがこいつは違う。
柔らかい肌を触れば自然と口端があがる
(早く声が聞きてぇな)
少しすれば彼女は起きて震えだした。怖かったのだろう、可哀相に。でももう大丈夫だ。
ここに居れば巨人はこない。もう恐がる心配もない。
1つ1つ質問に答えてやる。
あぁ、こいつは本当に何も知らないんだな、とわかり一つの結論を出した
壁外に居た、何もしらない、戦わない女。
(他の世界から来たのか?)
ありえない、と思う反面辻褄があう。
(まぁ、どこのどいつかはこの際どうでも良い)
話す声もあいつにそっくりだった。
「お前は俺の恋人だ」
二つの意味をこめた。
一つは、エリは俺の恋人になる“はず”だった。
想いを伝える前にエリは死んだからな。伝えてれば恋人同士になっていたはずだ。
もう一つは、目の前のエリに言った言葉だ。
(そう。今日から、お前は俺の物だ)
驚いた顔をしたエリに畳み掛けるように言葉を連ねる。
(違うなんて、絶対言わせねぇ)(なにがなんでもだ)
そしてエリは選んだ。
“エリ”になる事を。
口の端が上がる。後は簡単だ。
何も知らない事をいいことに嘘を並べる。
素直に信じるエリが愛しい
「リヴァイ」
初めて呼ばれる名前。
あぁ、何度夢見ただろう。
『兵長を名前で呼ぶなんてできません』
あいつはいつもそう言っていた。『兵長、戯れが過ぎます。手を離して下さい』
頬を触ってももうそんな事言わない
『甘いものは高価です。私より兵長が召し上がって下さい』
いくら有名なお菓子をやろうともエリは受け取らなかった。
(あぁ、きっと今日も扉の向こうで俺だけのエリが居る)
仕事を早く切り上げすぐに向かえばドアに幾つかの傷を見つけた
(……)
今日の会議中居なかったヤツを思い出す
(はえぇな、くそっ)
渡すものか。
(その為にこの部屋を作った)
逃がすものか
(そんな気すら起こさせないように)
会わせるものか
(俺以外のやつなんかに)

殺させるものか

(今度こそ守る)
赤い花をつければ、エリの目から大粒の涙が零れた
(お前のためなんだ、泣かないでくれ)
零れ落ちる
(それすらも愛おしいと感じた)
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