初めて彼女に会ったのは科学班に立ち寄った時だった。
「リーバー!俺のバンダナしらんさー??」
破れたバンダナを見たジョニーが直してあげる!と言って科学班に戻ってから数時間がたった。
忙しい科学班の連中には悪いがのばし切ったこの髪が邪魔だ。早くバンダナを返してもらいたいと思いラビ自ら科学班にまで足をのばした。
「あー?悪い、今手離せないんだ。その辺にないか?」
自身の机の前にいたリーバーは頬を掻きながらジョニーの机を指差した。
(あれ…?)
「その子、誰さ?」
ジョニーの机の前にリーバーに目を向ければ何かを守るようにリーバーがそれを抱き締めている
“それ”は間違いなく人間で、リーバーの腰に手を回して居るのが目に入った
「おぉ、ラビは最近来たから初めて会うのか」
少し困ったように笑うリーバーの側に近寄ると足音が聞こえたのか“それ”の肩がびくりと揺れる
「ほら、ななし。挨拶しろ」
な?と言うリーバーの顔を一度見てからななしと呼ばれたそれは俺を見た
「…は、じめまして。ラビっす」
くりっとした大きな瞳が自分を映し出し少しドキリとした。
顔つきを見て幼い女の子だとわかる。泣いていたのだろう目は潤んでいた。
それよりも目立つのは頬に貼られたガーゼだ。顔の半分を埋める程のガーゼはかなり痛々しい。
すぐに視線を下におろす。
自分と同じ十字架を確認して、こいつもエクソシストなんだなと思い、所々汚れて居るのと無数の傷を見れば任務帰りなのがわかった。
「可愛い女の子さね」
気持ちを整え直しラビはへらっと笑った
「この子はななし。同じエクソシストだ」
ななしは俺の姿を確認するとまたすぐにリーバーの腹に顔を埋めた
「ななし、ラビは仲間だ。挨拶くらいしろ」
「あー、いいよ。別に。その子任務帰りだろ?」
「あぁ、悪いな。この子人見知りするんだ」
よしよし、と頭を撫でるリーバー。
女の子は嬉しそうに目を細めている
「あ!ラビ!!ここにいたんだ!」
後ろからジョニーの声が聞こえて振り返る。手にはバンダナを握っていた。
「あんまり遅いから取りにきたんさ」
「ごめんごめん」
二人のもとから離れた。
それが初めての出会い。
それから数日後また彼女に会った
「あれ?ななしちゃん?」
「!!」
科学班から一番近い談話室に彼女は座っていた。
頬を覆っていたガーゼはもう取れていて綺麗な顔立ちが目立った
「覚えてるさ?俺の事」
正面のソファーに座れば手に持っていた紙をくしゃりと音が鳴るほど抱き締めた
「…………」
「…………」
無言。警戒されているのか目を合わせてくれない。
ラビはポリポリと頬を掻いてからへらっと笑う
「俺の事怖い?」
「………」
もしかして言葉話せないのか?なんて考えるがリーバーはそんなこと言ってなかった。
ならやっぱり嫌われているんだと思う。
はぁ、とため息をつきたいのを我慢して、もうここから去ろうとしたときだ
「………ない」
「え?」
「こ、わく、ないよ」
可愛い声だった。
鈴のような高い、響く声
ラビは嬉しくなって立とうと動かした体をまたソファーに沈めた
「ななしちゃん、何歳?」
「あ、あの………えっと……」
「あ、言いたくなかったらいいさ!」
「あ、の……じゅ、」
ぎゅ、と握られた紙がまた音をならす
「じゅうに、さい」
絞りだした言葉。
小さい声だったがラビには十分聞こえた。
「12歳か!俺の方がお兄さん。俺16だもん」
「お兄さん…」
ふとリーバーの言葉を思い出す。“人見知り”と彼は言ってた。
「ななし、さっきから何見てるんさ?」
指差せばななしはおずおずと見せてくれた
「ん?これ数学?」
「宿題、なの……」
「宿題??」
ふむ、と紙を見る。
数字の羅列。計算問題らしい。
鉛筆で自信なさそうな字で答えが隣に書いてあるのを見てななしらしいと感じた。
「リーバー、さん…待ってるの」
「リーバーからの宿題さ?」
ななしは首を一度だけ振った
彼女はまだ12歳だ。勉学も必要だとリーバーが宿題でも出したのだろう、と考えていると間違いを見つけた
「ここ、間違ってるさ」
「え」
もう一度見なおそうと手を伸ばしてくるななしに紙を渡す
「ほら、十のくらいも足さないと」
「ほんと、だ」
「あとはあってるさー」
「直して、くる」
鉛筆を探しに彼女は立った。
パタパタと走っていく彼女の背中を見て言わなければもう少し話せたかな、と後悔。
入り口についたときななしの足が止まった
ゆっくり振り向いたななし
「ありがと、ラビ」
「!!」
口元は紙で隠れていてわからなかったけど、それは初めて呼んでくれた俺の名前。
ななしはすぐに走って行ってしまった。
「……ななし、可愛いさぁ」
だらしなく緩んだ口元を隠しもせずラビは笑った。
小さな少女との出会い
(その後リーバーに宿題を見せて居たななし。後ろ姿でわからなかったが頭を撫でてもらって凄いな!とリーバーに褒められていた所を見ると、きっと彼女の顔には笑みが浮かべられているのだろう)
(俺もいつか見てみたいさ)

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