「ふぇぇえん!ひっく、しゃ、しゃす、しゃすけぇぇ!」
「はいはい、どうしたの姫さん」
うわぁぁぁあ!と涙でボロボロになった顔で腰に抱きついてきた小さな子ども。
佐助はよしよしと頭を撫でた。
「べんまるにぃさまがぁ、べんまるにぃさまがぁ…」
口から出るのは自身の兄の名前だ。
また喧嘩でもしたのだろうか。
そう言えば一昨日は団子を取られたとかで全く同じ事をした。
大抵弁丸様が悪く、謝らせて終わりだが。
「ほら泣いてちゃわからないでしょ」
「うっ、ななしも、ななしもさすけがいいっ」
「へ?」
「ななしもさすけがいいの!」
「………」
全くもって意味がわからない。
小さな手をいっぱいいっぱいこちらに伸ばしている姫さんをだっこしてあげるとぐりぐりと顔を肩に押しつけられた
「姫さん、俺様意味がわからないよー」
「ななしー!!!」
そんな時、曲がり角の向こうからドタドタと足音が聞こえた。
走って出てきたのは、自分の主の弁丸様だ。
「佐助!ななし!」
「弁丸様、ちゃーんと説明してよね」
少しだけ気まずそうな顔をした後口を開く。
「ななしが、佐助の事を好いておるというのだ」
「へ??」
「ななしは、さすけがいいです!ほかのしのびは嫌です!」
聞く話によるとこうだ。
先日ななし姫に新しく世話役のくのいちが着いたそう。
しかし人見知りのする姫さんは俺が居ればいいといって逃げ回ってるそうだ。
それを弁丸様が見て何か言った、と。
「ななしはまだ仲良くなれないだけだ。きっと佐助と同じくらい仲良くなれる!」
「やです!ななしはさすけがすきです!ほかのひとはやーですー!!!」
ギュッと細い腕に力がこもった。
(可愛い……!)
姫さんに着いた忍びには悪いが、なんとも可愛らしい事を言ってくれる。
自分の名前を何度も呼んでは、さすけがいい、さすけがいいと。
「さ、佐助は某の忍びゆえ、ななしには渡せぬ!」
「にぃさまのいじわる!」
「い、意地悪ではないっ!!」
弁丸様がななしを俺から離そうと服を引っ張る
「やー!!」
「ななし!わがままはダメでござる!」
二人の小さな兄妹を見ながらダメだと思いつつも口が緩んだ
「俺様、幸せものだねぇ」
忍びの取り合い
(姫さーん……あれ?)
(さすけ!おなごどうしのはなしだからきちゃだめー!)
一月もすればそのくのいちにも慣れてしまい、俺は蚊帳の外だった。
(はぁ。女って難しい)

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