女はいつも男の想像を越えていく


「やっぱり鶴見さんの差し金でしたか!」
キャッキャッと弾んだ声でさくらは目の前に座る鶴見を指差した
「いやぁ、君にとっても仲間がいるのはいいことだろ?」
「先に言ってくださらないと、私月島さんを殺すところでしたよ」
「ははっ、君の腕では月島に敵わんよ」
「あら、随分信頼されてるのですね。嫉妬しちゃいます」
月島は交互に二人を見て眉間に皺をよせた
「鶴見中尉」
「そんな怖い顔をするな。きちんと紹介し直そう」
「さくらです、耳が聞こえないふりして色んな所で話を聞き回ってました」
さくらはニコッと笑うと月島に向きなおす
「これからは二人で裏切り者を見つけましょうね」
「さくらはこの短期間で三人の裏切り者を見つけたなぁ」
「皆さんお口が軽いようですよ、鶴見さん。私が聞こえないことを良いことに、普段の話に混じって笑顔で計画を話してました」
うふふ、あははと何が楽しいのか笑いながらお喋りをする二人
「…………あの時も、聞こえてたのか?」
「あの時?」
「最初の空砲、それに、尾形の…」
「あぁ!もちろん」
それが?と言いたげな顔をしているが、少しの反応を見せなかった辺り徹底している、と月島は感心した。
「その辺に関しましては気を付けてました。他の人にも似たようなことを何度もされて…。最初の3日程はまぁ、面倒でしたよ」
流石鶴見さんの部下ですね。疑り深い。なんて言いながらさくらは鶴見の側へ駆け寄って膝に手を置いた
「これで話し相手が増えました。鶴見さんだけだと話足りなかったんです」
「三人は皆始末したのか?さくらが?」
「そうですよ」
「どこにそんな力が…」
「秘密です」
ニコッと笑う彼女の目は笑っていなかった。彼女もまた鶴見中尉のお気に入りだ。並大抵の人ではないのだろう。
「あ、そうだ。私嬉しかったんです」
「なにが…」
「あの時、耳が聞こえないふりをしていたのに、兵士たちの会話が女性の前でするような話ではないと言ってくれたから」
ふと、少し前の事を思い出す。確かに兵士たちの会話が彼女にとっていい気分のものではないのかと言ったことがあった。
「月島さんって、案外紳士なんですね」
「よかったなぁ、月島。さくらに気に入られて」
「一番は鶴見さんですよ」
「うんうん。可愛い可愛い」
「月島さん、これからよろしくお願いしますね!」
声を聞くと余計幼く見える彼女は、次の日からまた人形のふりをして歩き回っていた。
きっと今日もどこかで誰かの話を聞いてほくそ笑んでいるのだろう。
(女と言うものは、怖いものだ)
月島はため息をつきながらまた鶴見のもとへと向かった。
女はいつも男の想像を越えていく
(本当に変わらない笑顔、聞こえないふりが得意なんだな)
(私がうまいんじゃなくて、貴方達が引っ掛かるのがバカなのよ)
(そういって彼女はケラケラ笑った)


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