寮のラウンジに入ったオレが一番に目にしたのは、大人しくソファーに座っている支倉の後ろ姿だった。このネコ女はとにかく神出鬼没で一カ所にこうして留まっていることはほとんどない。珍しいこともあるもんだと支倉の正面に回って、オレは思わず目を見開いた。

「…かなで?」
「誰かと思えば如月弟か。静かにしてくれ、かなでが起きてしまう」
「いや、それはわかってるが…何でお前がかなでを膝枕してんだよ」
「かなでが疲れているようだったから私の膝を貸したまでだが?」

ソファーの背もたれに隠れて見えなかったが支倉の隣にはかなでがいて、その小さな頭を支倉の膝の上に乗せるように上体を倒していた。これじゃ確かに支倉は身動きが取れないだろう。この気紛れで神出鬼没なネコ女をこうやって一ヶ所に留めておけることがどんなにすごいことなのか…どうせこいつは知らないんだろうな。

「はあ…ったく、幸せそうな顔で寝やがって」
「余程疲れていたらしいぞ。君たちが見ていないところでも努力を欠かしていないようだったからな」
「ほんっと真面目だよな」
「それが彼女の美点だろう?」
「…まあ、な」

寝ているかなでの頭にポンと手を乗せた。かなでが起きると思ったのか支倉はオレを睨んだが、この程度のことじゃこいつは起きないことをオレは知ってる。かなでの起きない気配を感じたのか支倉はオレへの警戒を解いたようで、かなでへと視線を戻した。相変わらずというか何というか…かなでにだけは甘いよな、コイツ。

「そんなに見つめてもこの位置を譲ってやる気はないぞ」
「ハイハイ。…それにしてもかなでの奴、こんなところで寝ちまうとは警戒心の欠片もねえな」
「ここに住む男全員に対する危機意識がないんだろうな。つまり、君たちはかなでに男と思われてないんじゃないのか?」
「ほっとけ」
「それか、私のことを信頼してくれているのか。…ふふっ、こちらの可能性の方が高いと私は踏んでいるんだが」
「自分で言うな。つーかそれ本当っぽいから怖えよ」
「羨ましかろう?」

ニヤリ、と。支倉は口角を上げた笑い方を見せた。気紛れで神出鬼没でプライドが高く、自分のお気に入りを独占してそれをまわりに見せびらかしたがる。本当に、猫みたいな奴だと思う。相棒とかいう黒猫が実はこいつ自身、なんて話も信じちまう奴だっているんじゃねえの。…つかそれはかなでが信じそうで怖い。

「ったく、お前って本当…」
「仲良きことは美しき哉、と言ってもらいたいところだな」
「…まあ、そうやって余裕ぶってられるのも今の内だぜ、ってことにしておくか」
「ほう?君が私に勝てるのかな」
「……………おう」

やっぱ無理かも。





君と私が見つめる先に

(ほんっと起きねえな)
(ここが一番安心できるからだろう)
(ハイハイ、言ってろ)
















無理かもじゃなくて確実に無r←
ニアと男性キャラをvsさせたい今日この頃。vs神南のニア落ちとかどうですか言うだけはタダですよね←
※このニアはあくまで親友です。

キミニアイタイ様提出