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  あの時、六人で


「「海だーー!!」」

「青峰っち!海まで競争するっス!!」
「ぜってー負けねぇ!てか、負ける気がしねぇ」

帝光中男子バスケ部は全中も無事終了し、打ち上げと称して、海に来ていた。

青峰と黄瀬は一秒でも早く海で遊びたかったのか『浜から海までどっちが速くつくかレース』をしていた。

「まったく。はしゃぎすぎなのだよ。子供ではあるまいに。」

そう緑間は浮き輪にプカプカと浮かびながら言い放つが、

「緑間君…その浮き輪は何ですか?」

「っ!これは今日のラッキーアイテムなのだよ!別に、ラッキーアイテムで無ければ持って来るつもりはな、無かったのだよ!!」

緑間はラッキーアイテムである『白鳥の浮き輪』を見やり、頬を赤らめながら黒子に言った。

「(つまりは、緑間君も海が楽しみだったと。)」

本当は本人に言ってみたかったが言うとまた
ポコポコと怒るので心の中に閉まっておくことにした。

「そういえば、先程から周りの女性の方々がこちらを見ながら言ってましたよ。あの顔で白鳥の浮き輪…!?、と。」

「ふん。言いたい奴等には言わせておけ。
俺は人事を尽くしているまでだ。」

「…そうですね。」

黒子がそう言ったのを最後に会話が途切れ、
二人は波に身を委ね、気持ちよさそうに浮いていた。


************

「っしゃあーーー!俺の勝ちぃぃぃぃ!!」

「青峰っちに負けるとか屈辱っス!!」

「ちょ!?ヒドくね!?」

結局、レースの勝者は青峰だった。横で、屈辱的だ、なんだといって悔しがる黄瀬。

それを、写真におさめている人が一人。

我らが主将、赤司様だった。

「ふふ…涼太が悔しがってる写真を売りに出したら、さぞやたくさん売れる事だろうね。」

「赤ひーん。ほれ、ひゃってひひの?(赤ちーん。それやっていの?)」

横で、紫原がグレープ味のかき氷にがっつきながら問う。

「いいんだよ。売り上げは全部部費になるんだから。」

「ほっか。はらひっひゃー(そっか。ならいっかー)」

こうして、キセキはそれぞれ思い思いに海を満喫した。

****************

[あー楽しかったっスねー!俺、久々のオフでこうやって皆で海来れて良かったっス」

「あー…疲れた…。I'm tiredー」

「わー峰ちん、凄いねー。私は疲れたって言えるようになったんだー」

「一つ、また学習したのだな。アホ峰。」

「ほんの少しだけ賢くなりましたね」

「僕としては、せめて大輝は『I'am tired Play in the ocean because is was too.』くらいは言える様にしておいた方が良いと思うけど。」

「うぇ…なんだよそれ。」

「あははー峰ちん馬鹿だー。あれは『私は、疲れました。なぜなら、海で遊びすぎたからです。』って意味だよー。
そうだ、峰ちん“うましか”って知ってるー?」

「あ?何だそれ」

「“うましか”を漢字に直すと…こやって書くんだよー。」
紫原が笑いを堪えながら何処からかメモ帳とペンを出し、「馬鹿」と書いた。黄瀬は笑いを堪えられずに爆笑していた。

「ん?……おめぇに言われたかねぇよ!!」
さすがの青峰でもその漢字は読めたらしく、紫原に向かってぎゃあぎゃあと喚いていた。
「でも、紫原君の方が頭が良いのは事実です。」

「そーっスね(笑)」

「人事の様に笑ってましたけど、黄瀬君も大概ですよ」

「黒子っち酷い!!」

「黒子の言った事は間違ってはいないのだよ」


などど、他愛の無い話をしながらそれぞれの家へと帰っていった。

キセキ達6人がこれを最後にプライベートや部活でもで揃うことは無かった。

なぜなら、この数日後に、黒子はバスケの世界から身を引いた――つまり、バスケを辞めたのだから。




あの時、六人で
(おもえば、中学3年の)
(あの時期が)
(俺達にとって)
(一番)
(幸せなひと時だったの)
(かもしれない。)


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