スペア | ナノ


  2


時は過ぎて、いよいよ明日は京都に行く日。
俺らは今、とんでもない状況に陥っている。

「…で。この状況は?随分と楽しそうだね」

俺も混ぜてほしかったぐらいだよ、と言うのは我らが三男チョロ松だ。だが、いつもの奴とは少し違う。

顔 が 般 若 だ
いや確かに、パット見微笑んでんだよ。口元も弧を描いてるし。
でも、背後にどす黒い気が見えんのは俺だけ!!?俺だけじゃねぇよな!!だってコイツらも顔面蒼白だし!!!

俺は急ぎ小声で4人に集合をかける。

「やっべええよ今日のチョロ松、いつになく不機嫌なんだけど!!」

コソコソ…

「……プロレスしてたからじゃね」

「いつもは怒んないじゃん。何であんなに怒ってるのさ?僕達何もグッズ壊してないよね?」

コソコソコソコソ…

「俺腹減ってきたかもーっ!!!」

「嗚呼、古に伝わりし供物を捧げヒィッ!」

ガンッ!!!!

…うっはぁ、これガチ切れのやつ。床凹んでるしカラ松ガチ泣きしてるし。
てか十四松のバット使うとか…やんちゃしてた頃のチョロ松、「やんチョロ」出ちゃってんじゃん。どんなに常識人ぶって大人しい子決め込んでも、怒ると出ちゃうもんなのか。

「…俺今日家出る前に言ったよね?明日は早いから荷造りさっさとしといて、って。」

……あー、明日は京都行く日か。

「悪ィ!プロレス楽しすぎて忘れてたわ」

瞬間、俺の頭に拳骨が落ちた。なんで俺だけ、理不尽すぎる。


(母さーん…って電話してるし)
(なんか楽しそー!!野球したくなってきたぁ!!)
(トド松ーSkype使えるかしら?)
(使えるけど…母さんが使うなんて珍しいね)
(何言ってるの!今日は紫ちゃんから電話くるって言ったでしょ!)
((((((あ…))))))


すっかり忘れてたようです





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