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「起きなさい、朝よニート達!!」
昨日から我が家の母は変だった。
コソコソと誰かと電話をしていたり、奥から随分と着ていなかったであろう服を引っ張り出してみたり。
現に今も、いつもは俺らがどんなに寝ていようが起こしに来ないのに。
「あー!!!!母さん達旅行行くの!!?」
…うるっせえなぁ十四松。俺の体内時計はまだ夜中の2時指してんの。眠いか寝かせr……は?
重たい瞼に鞭打って開けてみると、いつぞやのようにキャリーケースを手に、いつもより小綺麗な格好をした母さんと父さんだった。
「…おい!起きろニート達!!」
取り敢えず未だ夢の中な一松とトド松を叩き起こし、俺は改めて母さん達を見た。
「うわぁその格好はどしたの母さん?まさかまた離婚とかじゃないよね?」
おいトッティーお前!!滅多な事言うんじゃねぇよ!!もう二度と我らの唯一の牙城を失うようなあんな思いしたくねぇんだよ!!
「よくぞ聞いてくれたわね…これを見なさい!」
母さんの手には、年に一回ある『赤塚商店街大福引き抽選会』の目玉になっていた世界一周クルーズ招待券だった。
「え!!まさか母さん、僕達も連れて行くために起こしてくれたの!?」
「フッ…俺はハナからこんな場所におさまるような存在じゃないかグフッ!!「クソ松黙れ」」
…あーあ、馬鹿なカラ松。無理矢理叩き起こされた低血圧な一松が、怒ることぐらい分かるだろ…朝からあの腹パンはキッツイわー…南無三
「………これ、2名様ご招待って書いてあるけど」
その瞬間、歓喜に湧いていた皆がビシリと固まった。
え…じゃあ俺らって…
「留守番ってこと!!?いつ行って!いつ帰ってくんのさ!?」
「一年後だ」
「「「「「「一年!!?」」」」」」
一年も親無しで生きれる筈ねぇえぇええ!!!!洗濯掃除はまだしも、炊事は…ヤバい。特に4男5男にやらせようものなら確実に俺らは死ぬ…!
ちらりとアイツらを見てみると、皆同様に絶望の顔をしていた。
「はいはははーいはーい!!!!いいっすか!!?」
「母さん達も知っての通り…僕ら自分達では何にも出来ないんだけど…どうすれば…?」
トッティー…ほんの1ミクロンだけお前の株、上がったわグッジョブ。
「その事なんだけどね…母さん達悩みに悩んだわ。あなた達が一人でやっていけるとも思えない。でもみすみすこのクルーズ券を只の紙切れにするのも忍びなかった…!!」
「だから父さんと母さんはお前達をある人にお願いした」
ある人って…誰だよ。周りからは、トト子ちゃんかな!?ヒジリサワーー!!だとか予想色々出出てる。トト子ちゃんだったら俺明日全裸で赤塚町一周するわ
「昔おそ松を養子にと貰いに来た遠縁の人を覚えてるか?」
あー…あの関西弁のおじさんとおばさんか。どうでもいいけどあのおばさんすげぇ音痴だったな
「あーあの関西弁のおじさん達でしょ?」
「あの人達には息子は居なかったが娘さんが居てだな。その子が、よければ旅行だと思っていらしてくださいな、と申し出てくれたんだ」
親が金持ちなら余計、脛かじってりゃあ生きていけんのにその子は弱冠18才で大ヒット小説を売り出した名の知れた物書きらしく、生計も100%自分の金で立ててるらしい。
「俺らはその子んトコで世話になりゃいいって訳ね、わっかりましたー!」
「出発は1週間後。前日に電話をくれるそうだから挨拶でもしておきなさい。じゃあ母さん、そろそろ…」
「ええ…そうね…」
え!!?俺ら置いて今日から行くのかよ!?じゃあ俺ら1週間自分等でなんとかしなきゃいけ…
「着替えてきましょうか。この為だけに一張羅出してくるの大変だったわぁ」
「母さんこれ、来週行くまでにアイロンをかけてくれんか?」
「はいはい」
取り敢えずトッティー、「あんたら今日から行くんじゃなかったのかよ!!騙しやがったなコンチクショー」って顔、止めろ。スタバァでの顔になってんぞ、怖いから
(ちなみに彼女は京都にいるからな。)
(お土産よろしくね!ニート達)
(この面子で遠出とか怖すぎるっ…にゃーちゃああん!!!!)
(((チョロ松/兄さん うるさい)))