ふう、と息をつけば吐き出した息は白くなって霧散する。随分寒くなったな――なんて思いながら冷たい手のひらに息をかけてもやはり一瞬しか温かくはならなくて、着ているコートの裾を伸ばし手を擦り合わせた。
「さむ…」
自分が生まれたのは冬だがやはり暖かい春ぐらいが一番いい。まあ夏もいいけど暑いからなあ。それに春はよく眠れるから好きだった。そういえば高校の頃はよく屋上で寝てたっけ。それと比べて今なんかろくに寝れやしない、自分は人より寒がりらしいから冬は布団を何枚もかけないと寝れないのだ。今だってコート一枚じゃ寒くて堪らない。ふる、と体を震わせ、もう一度手に息をかけた。
「シズちゃん!」
「…臨也」
呼ばれた方に振り返れば、相変わらず黒いがいつもと違う私服を着た臨也が小走りに走ってくるところだった。臨也の姿を見るだけで胸は高鳴って、低いであろう体温が少し上がった気がする。
「待たせてごめん、寒かったでしょ?」
臨也の両手が頬を包む。彼の手はこの寒い中でもなぜか温かい。心地好さに目を伏せ、擦りよればくすりと笑う気配がした。包む手が離れて、臨也は自分のマフラーを取り、静雄に巻いてやる。その動作にきょとんとしながら静雄はされるがままになっていた。
「少しは変わると思うんだけど、どう?」
そう聞かれて漸く自分のしてもらったことに気づく。赤く色付いていく静雄の頬に臨也は指先を這わせ、柔らかく笑んでみせた。巻いてもらったマフラーは臨也がしていたせいで温かくなっている。その恥ずかしさにマフラーを口許まで引きあげれば、臨也の匂いがして恥ずかしさをまぎらわすどころか余計に悪化させてしまい脈打つ胸が煩い。
「温かいけど、寒くないのかお前」
でもそんな、自分だけ温かいなんて申し訳ないだろう。それで臨也が風邪をひきでもしたら自分のせいだ。自分の体はいろいろ超越しているのでそうそう病気などしないし、そういうのとは今まであまり縁がない。だから風邪をひくなら自分でいいのだ。
「シズちゃんに温めてもらうから平気だよ」
臨也はそう朗らかに笑って冷たい静雄の手を取り、指を絡めた。所謂、恋人繋ぎ。――冷たいだけなのに。小さく舌打ちをするが臨也は絡めた指先に力を込め、くすくすと笑うだけ。
「バカじゃねぇの…」
せめてもの悪態をついてみるが臨也は手を話そうとはしない。
「じゃ、行こうか」
くい、と手を引かれては、抵抗もなにもできないじゃないか。もう、お前なんか風邪引けばいいんだ。ついでに手も使えなくなって仕事できなくなればいい。そう思って臨也と繋いだ手に力を込めてやる。
「…こんだけ力強かったらはぐれないねえ」
ねぇ、シズちゃん?
あはは、と楽しそうに笑う臨也には静雄はとうぶん勝てそうもない。
ああ、もう。本当に風邪引けばいいのに。
ひいい更新しなくてさーせん!
オチが酷い…ボツでもよかったけど一個くらい普通にあげないとね…
あと6000あざっす
(20111103)
Title:Chien11様から
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