暑い。7月の始めなのにどうしてこんなに暑いんだろう。6月もだいぶ暑かった。だからと言ってクーラーをつければ寒いし、つけなければ暑いしどうも夏は苦手だ。
「そういえば七夕だ」
キーボードを打つ音が止み、臨也の声がたくさんのパソコンの間から聞こえる。よくもまあ飽きないもんだ。何がそんなに楽しいんだろう。まあ臨也のことだから七夕だなんて今、ネットでも見て思い出したというところだろう。
「それがなんだよ」
静雄はそんなのとっくに気づいていたが知らないふりをした。だってそんなの恥ずかしいじゃないか、子供のようで。知らないふりをしてそういえば臨也はパソコンの前から移動してきて、静雄のとなりに座る。臨也の体は温かくてクーラーのきいたこの部屋ではちょうど良い。
「なんとなくさ。思い出しただけだよ」
そう軽く笑って静雄の腰を抱きよせる。静雄はビクリと反応したが、臨也は見ないふりをしていた。静雄がこういう反応をするのをわかっているからだ。
「可哀想だよな」
「何が?」
まだほんのり赤いままの静雄が諦めたように臨也の肩に寄りかかる。静雄の髪の毛が頬に当たってくすぐったい。
「一年に一度しか会えないんだろ」
静雄の表情は見えないがきっと悲しそうな顔でもしてるんだろう。
「それに、雨が降ったら一度も会えない」
そう小さな声で呟き、黙り込む。静雄は優しいから、こういうことにも真面目なのかもしれない。腰に回していた手を移動させて頭を撫でてやれば、舌打ちが聞こえた。でも何もしないということはこのままでいいということらしい。
「シズちゃんだったらどうする?」
自分たちが織姫や彦星のように一年に一度しか会えなかったら。自分がそれに堪えられるとは思えない。きっと自分だったらそんな約束すぐに破って会いに来てしまうかもしれないな。まあ、そんなこと思っているのは自分だけかもしれないけれど、それでもいい。
「会えなくてもいいの?」
「それは、」
黙る静雄にそう言えば顔をあげて首を振る。黙っていたのは考えていたようだ。
「そんなの想像したくねぇよ」
なあんだ、一緒じゃないか。自分だけじゃなかった。それが嬉しくて自然と頬が緩んでしまう。わざと音をたてて頬にキスをすれば、静雄は思った通りに赤くなった。
「ずっと一緒に居てね」
両手で隠してしまって顔が見えなくなってしまったのは残念だが真っ赤になっているのはわかりきっているから、今はこれぐらい許してあげよう。
「…出来たらな」
毎日見れるよう祈りながら。今日は雲が一つもなかったから、雨は降らないだろう。都会では天の川なんて見えないけれど、どこかで会えていればいい。
「いつか天の川でも見に行こうか」
来年でもなくいつか。そのいつかが来るまで、
とこしえの愛を、
(君に捧ぐ)
遅刻すぎる
もっと書くのうまくなりたいな
(2011/07/11)
お題:確かに恋だった