昼の後の授業はどうしても眠くなる。静雄でもそれは例外ではない。当然授業など頭に入るわけもなく、ぼーっとしながら窓から外を見下ろせば掛け声とともに体育の授業の様子が見えた。…やっぱり眠い。眠すぎる。目は半分も開かないし、油断するとこくこくと知らぬ間に舟を漕いでしまう。もういい、寝てしまおう。そう思って机に伏せ、目を瞑ればすぐに意識が遠退く。もう少しで意識が切れそうな、そんなときに後ろから背中を小さく叩かれる。不機嫌に後ろを振り向けばきれいに折られたメモ用紙が回ってきた。要は回し手紙。…誰からだろうか。自分に回し手紙がくるなんて。手紙は貰ったことがないわけではないが回し手紙は初めてだ。ゆっくりと開いてなにかと中を読めば、臨也からだった。…くだらない。ぐしゃっと丸めて無視すればまた後ろから手紙が回ってくる。またどうせあいつからだろう。くだらない内容送りつけやがって。同じように開けば、……あぁ、くだらないくだらない。くだらないんだこんなもの。授業中にも関わらず赤くなりながら臨也を睨み付ければ臨也は笑っていた。

「死 ね」

口だけを動かして臨也に向かって言えば臨也は笑みを浮かべたまま口だけで手紙の内容を伝えてくる。口の動きだけでわかってしまう自分が腹立たしい。さらに赤くなりながら強く睨み付ければ臨也は無邪気に笑う。眠気など、もうどこかに飛んでしまった。


「先生、ちょっと頭痛いんで保健室行っていいっすか」

立ち上がり、先生にそう告げ教室を出ていく。保健室に行く気など全くない。もちろん頭も痛くなどない。立入禁止と書かれたのを無視し屋上へ登る。扉は施錠などされてなくて簡単に開いた。

「静雄くーん」

憎たらしいあの声が珍しく自分の名を呼ぶ。いつもはシズちゃんとかいう馬鹿みたいなあだ名で呼ばれるから何だか気持ち悪い。

「んだよ、こっち来んな」

呼ばれたところで振り向くわけもなく、無視して帰れとひらひら手を振る。臨也もそれは同じで帰れと言われて帰るわけがないのだが。

「授業は受けなきゃ駄目じゃない」

「手前ぇもだろうが」

睨み付け吐き捨てるように言えばまぁねと口許を歪める。

「折角告ったんだから、返事ぐらいちょうだいよ」

「…嘘だろ」

「どうして?」

どうしてもなにもまず男同士って時点で間違ってる。それに相手が臨也じゃあからかってるとしか思えない。

「…どうせからかってんだろ」

「……本当にそうだと思ってる?」

突然耳許で低い声がする。いきなりの事に静雄の肩が震え、腕を掴まれ無理矢理に振り向かされれば臨也の顔が目の前にあった。後頭部を押さえられ、歯がぶつかるほど勢いよく唇が重ねられる。

「んっ…ふ…っ」

舌を捩じ込まれ、歯列を丁寧になぞられる。奥へと引っ込めていた舌はいつの間にか臨也の舌に絡め取られ蹂躙され、どっちのものか分からない唾液が静雄の顎を伝った。身体が震える。何かにしがみつきたくて手がふわふわとさ迷えば背中に回すように促され、臨也の背中に弱々しくもしがみついた。だが息が出来ない。鼻ですればいいが静雄にはまだそんな知識はなかった。酸素が欲しくて背中を軽く叩くがのキスで力の抜けきった体では押し返せるわけがなかった。息苦しさに涙が出る。頭がくらくらしてきたところでやっと唇が離され足りなくなった酸素を取り込む。

「はぁ、は、っぁ、はぁっ」

けほけほと少し咳き込み呼吸を整える。臨也は呼吸も乱さず余裕そうだ。自分だけこんなに余裕がないなんてなんだか悔しかった。



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静雄の日!
一応続きます!

(2011/04/20)




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