臨也とはだいぶ会っていない。会っていないわけではないが会うのは池袋なわけだから喧嘩しかしない。同じようなものだろう。彼は忙しいから我が儘なんて言うつもりはないが、ここまで相手にされないと不安にもなる。だがこの前なんか女と居たところを見てしまったのだからこれは不安じゃなく呆れや諦めだろうと静雄は思う。短くなった煙草を踵で踏み潰す。何を期待しているのだろう自分は。呆れているなら、諦めているなら早く別れればいいのに。それでも別れに踏み切らないのは、きっと怖いからだろう。向こうはもう別れたつもりなんじゃないか。まだ付き合っているなんて思っているのは自分だけなんじゃないか。告げたところでまだ恋人面してたのと言われてしまう気がして。

「…くそ」

あぁやめたい。こんなに自分だけ気分が悪くなるならすぐにでもやめたいのに。新しい煙草をまた一本取り出し、火をつけ、紫煙を思いきり吸い勢いよく吐き出す。この気分も一緒に吐き出せたら楽なのに。吐き出せない気分と共に静雄は昼休憩を終えた。



「シーズちゃん」

…仕事も終わり帰り道、せっかく夕飯のことを考えていて忘れていたのに。

「んだよ。池袋にはくんなっつっただろ?あ゛ぁ?」

「シズちゃんは新宿に来るくせに。そういうのは自分の事どうにかしてから言ってくれないかな」

黒ずくめの男は持っていたナイフを口許にあて厭らしい笑みを浮かべる。イラつくイラつくイラつくイラつく。ほんと早く帰れ。

「最近は行ってねぇだろうが。行ってもたまにだろ。だから帰れ」

吐き捨てるように言い、目を反らす。これ以上こいつを見ていたくない。

「……なんで会ってくれないの?」

目を反らした隙に距離を詰めたらしく臨也の顔が目の前にあった。その目は冷えきっている。怒っている、ということはすぐにわかった。

「…関係ねぇだろ」

そう言えば強い力で腕を引かれ路地裏まで連れていかれる。行きたくないと腕を戻そうとすれば力が余計に強まった。されるがままに路地裏まで連れられれば、壁に追い詰められ逃げ場を塞がれる。それに顔の横に手をつかれさらに逃げ場が無くなってしまう。顔を伏せたいが臨也より背が高いため伏せても意味がない。こういうときは自分の背が高い事が嫌になる。

「俺さぁ結構怒ってるんだけど」

「…………何が怒ってるだ。…こっちの気も知らないで。こっちがどんだけ寂しくて、不安だったか…っ…知りもしねぇくせに…!!!」

どれだけ苦しかったか。飽きられた、裏切られた、色んな想いが心を乱した。本当は女といるのを見たときは諦めと同時に涙を堪えるので精一杯だったのだ。今だってそうだ。臨也を睨むその力を抜けばきっと泣いてしまう。静雄にとって臨也の前で泣くなど恥以外のなんでもない。臨也は優しく静雄を抱き寄せる。

「……ごめん。気付いてやれなくてごめん。不安にさせてたなんて気付かなかった。…本当にごめんね」

きつく抱き締められ飽きられていないという安堵に涙腺が緩む。それを抑えるのに必死でどうしても体は震えてしまう。今喋ったらきっと涙は溢れてしまうだろう。黙ってそのまま居ると小さな体の震えが伝わったのだろう、泣いていることに気づかれてしまった。

「そんなに不安にさせてたんだね。……ごめん。でも俺はシズちゃんが一番だから飽きたりすることは勿論無いし、愛してるのはシズちゃんだけだから安心して」

あと、寂しくなったんならいつでも言ってよ。優しく頭を撫でられて我慢できず涙が伝う。顔を臨也の肩に押し付け、嗚咽だけは我慢した。

「…もっと大事にしろよな」

小さすぎるその呟きは臨也に届いたのか届かなかったのか、それはわからない。






クオリティがいつも以上に低くすぎる…
いつも低い上にもっと低いとかただの落書きより酷いね…
…なかなか更新しなくてすいません…


(2011/04/14)