「……はぁ?テニス部の?」

夜鶴は土下座せんばかりの勢いで頭を下げてきた写真部に眉をひそめた。

「頼む!真田達に見つかってお咎め無しなのはお前くらいしかいないんだよ〜」

「……ふぅん」

どうでもいい、と実に正直に顔に出ている。

「だからッ!恥を忍んで部外者のお前に頼んでるんだ!」

「いや、忍ばれようが頼まれようが私どうでもいいし。真田に叱り飛ばされるのなんていつもの事だろ」

身も蓋もないどころか血も涙もない夜鶴の台詞に部長さんの目の端に涙が浮かぶ。

「くっ……!!お前には人情ってモンが無いのか!?」

「私に決定的なメリットが無いなら人情なんか生まれない」

メリットを目的として動くなら確実に人情も何もなくなるのではないだろうか。

あくまでもやりたくないと言う態度を貫く夜鶴を前に、部長さんは封筒を出した。

「…賄賂かい」

「人聞きが悪いな。この頼みを聞いてくれた場合には、この中身をお前に進呈する」

「働きに対する報酬って事?」

捨て身だねぇ、と笑った夜鶴は肩をすくめた。

「いいよ、何すんの?」

部長が告げた内容は簡単だった。


【普段の学生らしい彼らの写真が欲しい】

「見た目からして学生らしくないっつーのに何てハードルが高い事を要求してくるんだ、あいつは」

借り受けたデジカメをぷらぷら揺らしながら呟いた夜鶴は、前払いしろと主張して受け取った封筒を開いた。

「あ、学食のタダ券」

これは明日から気合いを入れねば。