2 「小太郎、小太郎っ、お団子食べたい!」 「小太郎、あの簪可愛くない?」 「小太郎、小太郎、」 小田原城下。 もはや城下ですら有名になってしまった、少女と背の高い男の二人組。正体は勿論陽射と小太郎だ。 基本、少女がねだった物を男が黙って買うという構図は、見慣れた日常風景の一部になっている。 「姫様!」 遠くから声がした。 きっと家臣の誰かだ。 声だけで誰かはわからないけど、多分見つかったら怒られる。 「小太郎、見つからないような場所に連れて行って!」 「………」 小太郎の肩に乗って空を飛ぶ。 一気に眼下の城下街が小さくなった。 「わ、凄い!きれいな眺め!小太郎、もっときれいな場所ある?」 相変わらず返事はないが、方向転換して近くの小高い丘の上に降り立った。 「凄い、凄い!」 活気づく城下街、豊かな自然、青く澄み渡る空。 そこからは全てが一望できた。一つの画面に全てが映る。 「こんな場所があったなんて、また連れてきてよね、小太郎?」 こくりと頷いた。 二人でその場に腰を下ろし、暫くその美しい風景を堪能する。 「…ふぁ、眠い…。帰る時間になったら起こしてね。お休み、小太郎」 隣に座る小太郎の膝で気持ちよさそうに眠る陽射。 小太郎はその美しい髪を数度撫でてまた風景に視線を戻した。 因みに、帰宅した時には既に空は赤く染まっていて、余計にこっぴどく怒られたのは言うまでもない。 |