2020/08/16 00:30

 これは由々しき問題だと、チルタリスは頭を悩ませる。最近になってトレーナーが一緒に寝てくれなくなった。そのうえハグも無く、近寄ってくることすらも少なくなった。まったくない、というわけではないのだがその時間が減ったことには変わりはない。つまりは大事件だ。ついこの間までは、寝るときは同じベッドでくっついていたし、柔らかな綿のような羽をクッションのようにしてよっかかっていたりもしていたというのに。
 考えられる原因と言えばただひとつ、最近暑くなってきたからだ。元からふわふわの羽も持っているので、これを身にまとっていて暑いとは思わない。しかし、トレーナーは違う。チルタリスのような立派なふわふわの羽は持っておらず、毛の薄いちょっとぺたぺたする肌をしている。だからチルタリスと一緒にこの熱帯夜を過ごすのは寝苦しいのかもしれない。この素敵なふわふわを堪能できないなんて、悲しいことだ。
 しかし賢いチルタリスは知っている。あの扇風機という機械からは風が出てきて、あのエアコンという機械からは冷たい風が出て来る。いつもは扇風機しかつけなくて抱きしめてくれないが、エアコンをつけたときには抱きしめてくれるのだ。つまりは、あのエアコンをつけてこの部屋を涼しくしておけば、帰って来たトレーナーは涼しくてうれしいし抱き着いてくれるはず!
 そうとなれば今すぐにでもエアコンをつけないと。窓は開いていて少し熱を帯びてはいるけど爽やかな風が入って来るし、扇風機の風もあるがトレーナーが暑がりなのだから仕方がない。やれやれ、手のかかる子だ。そんなところも好きだけど。
 ぴ、と嘴でエアコンのスイッチを押すとぎぎぎと音をたてながらも冷たい風が出てき始めた。チルタリスが飛び回れないくらい狭い部屋だから、きっと涼しくなるのは速いだろう。あとはトレーナーを待つだけ。チルタリスはいつものようにベッドのうえに乗って、じっと玄関の扉が開くのを待つ。時計の針は半分を過ぎたところだから、昼寝をしていればそのうち帰って来るだろう。そう思ってチルタリスは目をつぶった。

「ただい……うわぁー! エアコンがつけっぱ、窓が開いてる!」

 扉の開く音と、トレーナーの声にチルタリスの眼はぱっちりと開いた。おかえり! 早く抱きしめてよ!
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