空は晴れている。雲ひとつない青空。こんなきれいな青空はずいぶん久しぶりだ。もうすぐ正午になろうかという時刻に校門を出たから、まっすぐのびているアスファルトの道路に影はなく、ならぶ店の軒下は薄暗い。とがったつめたい風が吹いた。冬の高気圧の風だ。目に映る景色はどこもぼやけてなんかいなくて、ふつうの住宅街のふつうの昼間で、吸い込んだ空気がひなびている気がするのは俺のこころの問題なのだろう。
学ランの肩に食いこんだかばんの肩ひもをなおして、歩きだす。
三限の数学の授業ちゅうに、何もかもが嫌になって、数学ノートに誰かを罵る言葉と、答えのない疑問を書き散らして、早退してきた。「狩屋、だいじょうぶ? ちょっと顔色わるいね」だなんて天馬くんに言われたことを思い出した。具合が悪いというのはまったくの嘘だから、顔色がわるいわけないのに。
ゆっくり歩いているから、そろそろ四限が終わるころだろう。公園の入り口の低い柵をまたいで砂利を踏む。ブランコに腰かけて空を見上げた。やっぱり、青い。すこし歩いただけだけれど、沈んでいた気分はだいぶましになった。あーあ、午後の授業何だっけ。国語と理科なら、まあ良いか。でも部活。今日まだ霧野先輩に会ってないや。目線をななめ下におとして、はーあ、と大きく息をはいたところで、制服のズボンのポケットに忍ばせた携帯が震えた。きっと霧野先輩だ。確信に近い予感をもって携帯をとりだす。ピンクのストラップがゆれた。


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