03

「ねえ半田、背のびた?」
昼休み、マックスは俺の前の人がいないのをいいことに、席をのっとってイチゴオレをすすっている。
「え、測ってないから分かんね」
母親のつくった卵焼きを口に放りこんで答えると、マックスはずずっとのこりを吸いあげて、パックをつぶし、
「うんのびた。ぜったいのびた。なんか高校生って感じでかっこよくなってて半田っぽくない。縮んでよ」
「無理だって」
マックスはわりと真剣な顔で、俺は笑いながら言った。縮むのは無理だしそれにのびてない。
そういうマックスだって高校になって告白される回数が増えた。そのたびに俺がどれだけはらはらすることか。「半田くん、松野くんと仲良いよね? これ渡しておいてくれないかな」などとかわいいラッピングを渡されることもあるのだから困ったものだ。かと言ってこの仲を公言することもできないわけで。最近、たまにこんなことを考えることがあって、そのたびにすこしだけ、切なくなる。切ないという形容詞を使うと大げさになる気もするけれどふさいだ気持ちにはその言葉がいちばん合う。すくなくとも俺の語彙のなかでは。
「土日にどっか行こうよ」
いすの背にもたれかかってマックスが言った。
「いいぜ」
「へへ、デートだね」
ちいさな声でそんなことをささやかれて、恥ずかしいのをまぎらわすためにマックスをにらみつけてやると、マックスはにや、と笑ってみせた。


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