02

マックスはずぼんのポケットに手をつっこみ、とりだした小銭を無造作に自販機の投入口にいれた。
「何にしよっかなあ」んー、とハミングのようにうなりながら自販機のディスプレイをながめるマックスの横顔は、高校生になってからのこの数か月でずいぶん大人びた。
「……これにする」ぴっ、ボタンが押されて、がごん、ピンク色の紙パックが落ちてきた。「苺オレ?」「そう、まだ飲んだことなかったからね」
暑いから日陰、さがそう、と言うマックスのとなりに立ってゆっくり歩く。中庭を横ぎって、上ばきのまま体育館のうらにまわった。まっすぐのびた雑草のうえに、マックスはどかりとすわりこんで、パックにストローをさした。ちゅー、とピンクに色づいた液体を吸いあげていく。
「甘ったるいや」半田、いる? と紙パックを差し出されたからせっかくだし受けとった。ほんとだ、甘い。汗がべたべたになりそうなくらい。
「これからますます暑くなるよ。夏だ」マックスの声は熱に浮かされたようにふわふわしていた。
もうひとくち、苺オレをすすった。ストローから口をはなすと、マックスが上目づかいですりよってきて、唇と唇が一瞬だけ、触れた。


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