「あ、なんすかこれ、うまそうっすね」
南沢さんのランチバッグのなかにクッキーを発見した。なかなかセンスの良い袋に入ってていかにも手作りって感じである。「いただきまーす」返事を待たずにクッキーを一つつまんで口に放り込んだ。倉間典人14歳、サッカー部ポジションはFW、実は甘党です。かっこ笑い。
もぐもぐとかみくだいていくと、南沢さんが目に見えて焦りはじめた。ちょ、あ、ええと、あー……などと歯切れ悪くうなって頭をかかえ首を横に振っている。ていうか何これ超うまい。まじうまい。さすがもてる男はこんなの貰えるのかいいなあと本気で思う。
もう一枚とりだしてかじりつこうとしたところで、眉根を寄せてしかめ面した南沢さんが、ぶすっとした声で「それ、うまい?」とたずねてきた。
「え、超うまいっすよ、いいですねえ手作りクッキーなんてもらえて」ほんとうらやましいっす。そう答えたら南沢さんの眉間のしわが深くなった。
「南沢さん?」「……」
もしかして食っちゃいけないものだったのか。でもおいしいお菓子だ。黙っている南沢さんを横目に、俺はクッキーを平らげてしまった。
「ごちそうさまでーす」ふざけて空になった袋を返すと、南沢さんはそれをくしゃっと丸めて制服のポケットにつっこんで言った。
「俺がつくったやつなんだよ、それ」


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