小説 | ナノ



銀河美少年に俺はなりたい

※色々と残念です
※スタドラネタのギャグ


「お疲れさまです」
残業中の伏見の耳に、メガネでパズル好きで五月蝿い上司の声が届いた。
今日は八田との戦闘の始末書があったため仕事が遅れ、時刻は23時をまわっている。
つまり、伏見は疲れていた。


宗像の言葉に返事はせず、黙々とパソコンに向かう。
カタカタとキーボードを叩く音だけが、しばらく部屋に流れていた。
「伏見君」
「何ですか?」
くそ、この上司は暇なのか。
二度目の声には返事をしたが、それきり宗像は何も言わない。
また伏見の指が弾き出す音だけが響いている。
宗像は伏見の背後にたったままだった。
「ふし…」
「仕事してください」
みくん、までは言わせない。
「おや、冷たいですね。ですが、私は仕事を終えました」
「ちっ」
「伏見君」
「はい」
色々諦めて真面目な返事をすれば、宗像がニタァと聞こえてきそうなくらい嫌な笑みを浮かべて一歩伏見に近づいた。
「君が午前中に提出した始末書ですが…」
「それがどーかしたんですか?」
「説明が不足していました」
疲れていていいかげんに書いた覚えはある。
書き直しとか言わねぇよな。
めんどくせー。
「書き直し」
「ちっ」
「と、言いたいところですが、私を笑わせてくれればそれでよしとしましょう☆」
「はい?」
な・に・が、よしとしましょう☆だ。
いい年して語尾に☆つけるなよクソメガネ。
「まだ24なのですが。心の声が漏れてますよ」
うるせぇ。
「すみません」
「まぁいいです。とにかく…何か面白いことをしてください」
こっちは暇じゃねんだよ。
疲れてんだよ。
残業なのがわかんねぇのか。
ホント、めんどくせー。
「伏見君、早くしてください。私はもう帰って寝たいです」
「さよーならー」
寝たいなら早く消えろよ。
「なので、早急に笑わせてください」
コイツ、都合が悪いことは無視か。
「寝たいなら寝ればいいでしょー」
「今日は笑わnight寝れない気がします」
笑わnight?
流暢にnightとか言ってる場合かよ。
発音無駄にいいのがムカつく。
「明日まで起きてればいいじゃないですか」
「ケンヲモッテケンヲセイスワレラガタイギニ……」
「あああああああ、待った室長」
「止めないでください」
「こんなくだらないことでダモクレスの剣出さないでくださいよ」
「そう思うなら早くしてください」
「嫌です」
「そんな酷いこと言うなんてよくないです」
酷いのはどっちだよ。
メガネつけた悪魔なのか。
「伏見君、私はなにも魔法少女やロボットに変身しろなどという高度なことを求めている訳じゃありませんよ」
なーにが魔法少女だよ、俺は男だ。
ちょっと待て。
ロボット……。
「室長、これ見たら帰って下さいね」
「やっと何かやってくれるんですね」
「変身、できますよ」
今ならロボット…サイバディに乗り込める。
そうだ、俺ならできるっ!
「アプリボワゼ―――――――――!!!!!!!!!!!!!!」
瞬間、セプター4の建物がガラガラと轟音をたてて壊れていき、白を基本としたとてつもなく大きいロボットが現れた。
「颯爽登場!銀河美少年、タウバーン!!」
伏見の服はいつの間にか青い制服からきらびやかな衣装へと変わり、髪は赤と金色へと染まった。
「伏見君……いや…君は……ツナシ・タクト!!」
伏見はサイバディに入り操縦を始める。
「美咲……違う。…今会いに行くぜスガタっ」



目をあけたら見慣れたパソコンがあった。
時計は23:12。
残業中で周りに人はいない。
どうやら作業していた途中で寝てしまったらしい。
夢か。
あの世界でなら俺と美咲は仲いいのに。

打ち込む作業を再開するとコツコツと足音が廊下に響いている。
少したってドアが開いた。
「お疲れさまです」
「っつ!室長。俺、帰ります」
嫌な予感がして、残業なんて忘れたように一目散に帰った。
残された宗像が、
「笑いたかったのですがね」
そう、呟いたことなんて知らない。