▼ 捕われ



人間は言う。「この世界は等価交換だ」と。
 僕は静かにまぶたを閉じ、今手に触れている艶やかな髪の感触に集中する。いつ撫でても綺麗な髪だ。彼女の真っ直ぐな白銀の髪は僕のお気に入りの一つ。おとなしく撫でさせてくれる彼女は、僕の双子の兄弟だ。いや、正確には"双子として作られた人形"だ。
 僕と彼女は人間の様な容姿と心を持っているが、髪や爪が伸びないのは勿論、食事、睡眠も必要なく性器も無い。その無欲な姿を、どこの誰だかが美しいと言い、僕と彼女をこの薄暗い牢屋に閉じ込めた。
「フレイ?」
 彼女の透き通った綺麗な声が牢屋に谺する。そっとまぶたを開けると、不思議そうな表情をした彼女が首を傾げていた。
「なに?」
 僕は彼女の髪を撫でるのを止めないまま返事をした。
「フレイ、泣いてるの?」
 彼女は僕の頬にそっと手を滑らせそう言った。僕は泣いていない。涙なんて出ない体だ。きっと彼女は、僕の表情を見て"泣いている"と判断したのだろう。
「……大丈夫だよ」
そう僕は心配している彼女に優しく答えてみせる。彼女の不思議そうな表情は相変わらずなままだった。これでいいんだ、無駄な心配はかけたくない。僕の大切な、たった一人の家族なんだから。


(フレイとフレイア/過去のお話)



2013/06/10 06:56 (0)

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