▼ ゆく年くる年



また、新しい年を迎えるそうだ。世間では賑やかな祭や宴が行われ新年を盛大に迎え入れる。

町並みに並ぶ服屋には、色白いマネキン人形に豪華な着物が着付けられていて、見る者を魅了させるであろうその煌びやかさに
僕は、そっと手を伸ばしていた。

「…綺麗だ。」

外気の温度に馴染んだガラスは、酷く冷たく僕を映す。
着物が似合わないであろう僕は、ふと彼女に買って帰ろうかと考えたが
僕に似合わないのなら彼女にも似合わないんだと苦笑いを零し、ガラスから手を離した

僕と彼女はよく似ている
髪色も、瞳の色も、背の高さも、顔の形も全て…今見ているこの白いマネキン人形と、同じ。

「僕らは人間に微笑みかける事だけが運命なのか」

僕と彼女は意思を持って生きている。生きているんだ。
目の前の人形は微動だにしない、当たり前だ。生きていないのだから。

ただの人形であった僕と彼女が
何故生を受け、何を思い、何をするのか
僕の大好きで大嫌いな人間に教えてあげる。

逝く年来る年、
"死ぬ事の出来ない"この体は
いつ最後の年を迎え入れるのか、

「早く終わらせてよ、シルキィナ」






2012/01/06 02:46 (0)

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