「かーずきちゃん、かーずきちゃーん」

「あン?」

「教科書貸してくんなーい?」

「はぁ?なんでだし」

「忘れたからに決まってんじゃーん。つべこべ言わずよこすのじゃ、うらうらぁー!」

「いやいや何を得意げに言ってんだお前は。つーか同じクラスだし。無理あんだろうが」

「男は黙って〜?」

「拒・否!」

「そりゃあないっすよーっ!」

「お前がねーよ!そんなノリだけで貸せるとでも思ってんのか!?世の中はなァ、んな甘くはねぇんだよバカタレが!」

「ちぇっ。いいじゃんかー。どーせ和希居眠りしかしないくせにさー。けちんぼー!甲斐性なしー!」

「うるせーうるせー」

「そもそも和希ちゃんは中途半端に真面目なんだよ!クラスでは一匹狼のなりそこないみたいな存在だし、本当はむしろ狼っていうかわんこキャラなのにね、昔から!細身でスラックスずり落ちて面倒だからって腰パンなだけだし!なんなんだよ!エセ不良!ちょい悪ダックスフント!」

「あ゙ーもーうるっせええええ!」

「痛ああッ!ちょ、ちょっと和希ちゃん!?暴力はいけませんのよあなた!痛いのは反対ですよ!」

「お前が意味不明なことばっか言うからだろーが!誰が短足じゃボケ!」

「ちぇー。じゃあいいよもー。たもっちゃんに借りるからー」

「…チッ」

「おやおや舌打ちとは可愛くないね。実に可愛くないよ」

「……貸せば満足なのかよ畜生が」

「えっ貸してくれるの!?」

「……ほらよ」

「わぁい!サンクス和希ちゃん!愛してるんだぜこの野郎〜!」

「……おー」

「んでー?立ち上がって一体どちらへ?」

「……保んとこ」

「…フッ、仕方ないな!付き合ってあげようじゃないか!」

「いやお前のせいだし」

「え?知ってるし」

「何だこいつうぜえ」

「え?知ってるし」

「はあああ…。なんでこいつと幼なじみやってんだろ俺…」

「まったまた〜そんな心にもないこと言っちゃってぇ!」

「あ?」

「ほんとはあたしらの中の誰より淋しがり屋さんのくせにー。なにより、あたし達以外友達なんていないくせ、プププッ…おおっとこりゃ失敬失敬★」

「ほんとうぜぇな、お前は」

「うざさはミーのアイデンティティさあ!」

「頼むからまじで黙ってくれ」





無邪気な女と中途半端な男

幼なじみ1 大宅 柚乃(オオヤ ユノ)
幼なじみ2 音無 和希(オトナシ カズキ)


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