あの雨の日から二、三ヶ月は経っただろうか。いつからか刹那はロックオンの本名であるニール、と呼ぶようになった。休日には刹那の行きたいという所に連れていってやったりと充実した日々が過ぎていた。


「ニールぅ…」


久々の休暇だった。ソファで寛いでいたニールの所に、ふらりと寄って来た刹那は酷く甘えた、色っぽい声で名前を呼んだ。目がとろんと蕩けるように潤んでいる。寝起きの所為という訳ではなさそうだ。


「どーした?刹那…あ、おい」


細い腕がニールの首に回され、膝の上に座り込んで嫋やかな足を腰に密着させた。人肌が恋しいのか時折、体を捩らせる刹那を見てニールは優しく微笑んだ。頭を撫で、艶のある和毛で覆われている耳の後ろを指先で軽く引っ掻いてやると鼻から抜けるような声を出した。ニールが与えたシャツが相当気に入ったらしくそれ以外は好んで身に着けようとしない刹那。触れるシャツの感触が心地良い。


「今日は甘えたさんだな?」


「…ん…」


人の形を成してはいるものの、相手は猫なのだ。可愛く感じない訳がない。甘えてきてくれるなら、存分に甘えさせてやろう。和毛をやわやわと撫でているニールは膝上にいる刹那に癒されている。猫特有の艶のある柔らかい毛は、シャツなんかとは比べられないほどに心地良い。


「ニール、ニール…」


甘い声で何度も自分の名前を呼ばれ、それに答えるように頭を撫で続ける。マッサージするように強弱をつけてやると、刹那はまた甘えた声を出す。尻尾がゆるりとニールの膝に絡み付いた。後頭部を撫でた時。指先が刹那の項をするりと掠めたのだ。


「んにゃぁっ!」


「!?」


体中の毛が一瞬にして逆立って、刹那の痩躯が跳ね上がった。力が抜けきっていた尻尾もピンっと張り詰める。


「悪ぃ…どっか痛かったか?」


「…」


キョトンと自分でも呆けている刹那は先程の反射を気にすることなく、再びニールの胸板に顔を擦り付けた。その様子にニールも釣られるように先程同様、頭に手を遣った。鼻をすん、と鳴らした刹那はニールの首元に顔を埋めようとしてそろりと動く。鼻を忙しなく動かしているのは匂いを嗅いでいるからだ。


「ニール、良い匂い…」


「前もそんな事言ってたな」


一体どんな匂いなんだか、と笑うニールを他所に刹那は首に鼻を接近させて匂いを堪能する。首筋に刹那の柔らかい毛が触ってくすぐったい。ああ、こんな癒される事は他にないなと刹那の体温を受け止めるニールも満更ではない様子だった。


「ん?」


しっとりとしたものをジーパン越しに感じた。刹那の足と触れ合っている部分が妙に湿っているように感じたのだ。何だと思い刹那を体から引き離して目を遣りニールは一瞬息を忘れた。刹那の内股を液体がつう、と伝っているではないか。


「…!?」


ニールの様子に気がついた刹那は恥ずかしがるようにしてポツリと呟いた。顔を赤らめて先ほどよりも目を潤ませ甘い吐息を吐いて、シャツの裾から手を入れた。


「なんか…ここが、熱いんだ…ニール…」


くちゅ、と小さく湿った音が聞こえた。部屋が静かな為か、その湿った音と刹那の吐息が部屋の控えめに響く。そしてニールの心臓は、心音が刹那に聞こえるのではないかと思う程に鼓動を刻んでいた。力なく垂れた尻尾がニールの腿を這い、量を増した液体が内股を伝う。


「お願い、ニール…触って…」


裾を捲り上げて顕になった白いショーツで覆われたソコは、半透明になるほどに濡れていて仄かに肌の色が見え隠れする。あまりの事態に呆然をするニールを見て刹那は悲しげに鼻を鳴らして濡れた部分に手を伸ばす。触ってくれないなら自分で触る、と熱を持て余した結果の行動にすぎなにのだがニールにはたまったものではない。


「駄目だ刹那…!!」


「いや離してぇ…っ!」


「女の子が人前でそんなことするもんじゃない!」


「いやっ…」


駄々をこねる刹那を見兼ねてニールは思わす強行手段に出た。あとから思い返せば他に手段はあっただろうとニールは反省することになる。


「ン…っ!」


刹那の唇は、ひどく柔らかかった。