子どもっていうものは、目に映るすべてのものが輝いて見えているんだと思う。
経験したことのないものでも、自分の中に取り入れて一生懸命に理解しようとするものだ。
それは刹那でもぜんぜん例外じゃない。
……いや、だからといって風呂は……。
誰でも経験はあるだろう、というツッコミは敢えてしない。
…なんでこんなに可愛いんだろう…。
ニールは自分の前でしゃがんで頭を洗われている少年を見やり、微笑んだ。普段は大人顔負けの戦術で戦場を駆けるまだ年端のいかない子どもは、ときどき気まぐれに素直になってニールを喜ばせる。
右手に大きな傷が出来ている。動かすのも辛いから、頭を洗ってくれないかだって。めったにない甘えた刹那に上機嫌でニールは了承した。
無茶しちゃって……。とニールは耳の後ろを泡とともに擦ってやり、地肌に爪を立てないように指の腹で優しく汚れを落とす。くすぐったそうに身を捩る刹那が面白くて、後ろ姿だけ見るのがつまらなくて。
「お湯かけるぞ、目瞑れ」
ふわふわの泡を両手で包み込んで息を吹きかけたりしゃぼん玉を
作ったりして遊んでいた刹那。冒頭に戻ろう、これこそニールが可愛いと思っていた仕草である。きらきら輝かせていた目をぎゅっと瞑り、流れるお湯に耐える。艶々した黒髪が綺麗で、ニールはつむじのところを擦ってみたり泡の流し残りがないかチェックした。
「はぁ………」
うっとりと、刹那が気持ちよさそうに溜め息をついた。色っぽくて、官能的。ニールは不覚にもどきっとした。
自分の方に身体を向かせてタオルを渡す。前髪をかきあげてやると、ほんのりローズヒップオイルの匂いがした。思いのほか頬は蒸気していて、のぼせてしまったのかと心配になった。
「さっぱりした?」
「……気持ちよかった」
「……うっわ、エロっ」
どうしよう、可愛い。そういう目でしか刹那を見られなくなった。刹那は「なっ……は!?」と慌ててタオルで真っ赤になった頬を隠した。
そういえば、普段の刹那の性格を考えて、風呂で1人泡で遊んだりしている情景が浮かばない。もしかしてこんな刹那は、俺と風呂に入る時だけ見られるのかな……とニールは嬉しくなった。
「あら、のぼせた?」
「違う!誰のせいだと……」
「え、俺のせい?え?刹那、なに、恥ずかしいの?」
「うるさい!黙れ!もう二度とロックオンには頼まないっ!アレルヤに頼むっ」
「え!いやだ!やめてそれだけは!!」
照れ隠しに手にとった石けんやらタオルやらをぼんぼんニールに投げていたら、泡で刹那が足を滑らせた。やばい、とニールが直感で刹那の腕を引っ張って抱き寄せて、頭を打つのを避けた。おかげでニールは背中を打ったけれど、真っ先に案じたのは刹那の身体。
「っ……刹那大丈夫か?腕とかぶつけなかった?」
「!……ロック、せなか……」
「へいきへいき、」
「……ばか、っあ」
素直になれない自分を悔やんだが、その考えは自分たちの状況を把握することで吹き飛んだ。
寝転がって、抱きしめられて。風呂の床が冷たくて、しかもほぼ裸。同姓といえど自分たちの仲は深いものだ、意識せざるを得ない。
「刹那あったかい」
「……だまれ……」
「あー幸せ。また一緒に入ろ」
「…………………」
熱にとろけそうになりながら、その温度に身を委ねながら。少しずつ早まっていく自分の心臓の鼓動の音が、どうか聞かれませんようにと、願いつつ刹那は目を閉じた。
happy bath day!
あったかくて、気持ちいい!
beautiful worldのGyanさんからフリー配布とのことでしたので、こっそりと頂いて参りました。ニル刹でお風呂…なんか癒されます////Gyanさん、萌えをありがとうございますvvvv