世の中はクリスマスで賑わっている。それは地上での話し。世界各地の戦争に武力介入を行っているソレスタルビーイングには到底、(女性クルー陣の口から聞こえてこないわけではないが)縁も所縁もないわけである。しかし、ここに脳内がクリスマス一色になっている男が一人。

「刹那……」

「ニール?」

世の中の男女が甘い一時を過ごしているだろうというのに、何が悲しくて仕事に勤しまなければならないのだ、というのがこの男の―口にはしないが―言い分である。年末行事に全く興味の無い彼女の部屋に転がり込んで、その彼女の小さな体を抱きしめている。

「刹那、今日がなんの日か知ってるか?」

「クリスマスだろう、それくらい知ってる」

知ってるのに、イチャイチャしようとは思わないのね…とニールはがっくりと肩を落とす。だが逆に「クリスマスだから、ニールと一緒にいたい」と刹那に言われたらニールは「刹那、頭でもぶつけたのか!?」と心配してしまうのだろうが。

「折角のクリスマスなんだ、なにか特別なことをしようぜ?刹那」

「別に興味ない」

そんなことよりもエクシアの整備に行くからこの腕を退けろ!と刹那はニールをぞんざいに扱うのだ。俺たち付き合ってるんだよな?とニールは不安に思い始める。人との接触を極度に嫌がる刹那を抱きしめたりもした、控えめにだが手も繋いだ、息をする間もないくらいの激しいキスもした、そして一線も越えた。この服に隠れた肢体を、己の欲望に染め上げた瞬間の事を思い出すと未だに体が火照る。それほど刹那の魅力は凄まじかった。

「んな冷たいこと言うなよ」

「うわっ!」

逃げだそうとする刹那を軽々と自分の腕の中に引き戻したニール。刹那の腰に腕を回してがっちりホールドして、なだらかに隆起する胸元に顔を埋める。むに、と柔らかな感触が頬に伝わった。柔らかい、とニールが気持ちを緩ませた時。

「やっっっめろ!!」

「うぐっ!」

鉄拳というかこの場合は鉄槌と言った方が適切だろうか。ニールの脳天に刹那の拳が振り下ろされた。ニールの腕から逃げ出した刹那は立て続けにニールを叩く。

「こんの強姦魔!お前が世界の歪みだ!」

「こら刹那!どこでそんな言葉覚えたんだ!?つか強姦してないから!」

所詮は男女の力の差。あっさりと腕を掴まれて動きを制されてしまった刹那。

「刹那、顔 赤いか?」

「!!」

もしかして照れてたのか?顔を覗き込もうとするニールから逃げようともがくが腕はしっかりと掴まれたまま、抜け出せない。

「やめ、ニール…顔が近…っ!」

「刹那、可愛い…」

「――っ!」

羞恥のあまり刹那の思考よりも先に体が動いた。刹那は渾身の力を込めてニールのわき腹に回し蹴りを食らわせた。

「ぶっ!?」

「俺はエクシアの整備に行く!ニールなんか知らん!」

「ちょ、せつな…!」

床に蹲って痛みに耐えるニールを尻目に刹那は部屋を飛び出して言った。

『ロックオンフラレタ!フラレタ!』

「フラれてねーよ。くっそ、刹那可愛いかった…」

コロコロと回転しながらニールの元へやってきたハロはそれだけ言って再び転がりながら『ロックンゴウカンマー』と呟いた。頬を染める刹那なんで滅多に見られないんだぞ、とニールは残念そうに呟いた。来年には、刹那から俺の部屋に来させるようにしてやる!と密かに心を燃え上がらせたニールだった。


前途多難二人
(幸先不安です)


「刹那、お前さん顔が赤いぞ?熱でもあんのか?」

「無い、断じて無い!」

「怒鳴ることないだろうに…」


新年の挨拶+日頃の感謝=期間限定でフリー配布物。
2010年1月12日〜同1月31日でした。※現在は持ち帰り出来ません。ご了承ください。