仕事に行っている間は構ってやれないし、刹那も暇だろうからとぬいぐるみを買ってやった。仕事帰り、客の少ないペットショップで猫のおもちゃを物色していて、目ぼしいものをみつけた。嘴と足のヒレが黄色で、お腹の部分は白くなっている水色のペンギンのぬいぐるみだ。刹那に買い与えるものなのにニール自身そのぬいぐるみのちょっととぼけた表情が気に入って購入した。刹那はどんな反応をしてくれるのだろうかと、店を出ながら袋の中を覗きこむ。が、よく見たらパッケージに『仄かなマタタビフレーバー』なんて書いてあるではないか。匂いがついているのはちょっと…と思ったがまあ刹那がリラックス出きるなら別に良いか、とニールは家路につく。玄関で靴を脱いでいると、刹那がわざわざリビングの方から素っ飛んできてニールの胸に飛びついた。ニールの帰宅がよほど嬉しいようで刹那の黒い尻尾がぴーんとなっている。

「ニール、おかえり」

「ただいま」

ごろごろと喉を鳴らしてくるのを見て刹那がよほど寂しかったのだと思った。と同時にぬいぐるみを買ってきてやって良かったと刹那の小さな頭を撫でながら微笑む。

「ほら刹那、これお土産だ」

「おみやげ?」

袋を手渡すと刹那は一瞬ぽかんとしたがすぐに理解したようでソファに飛び乗って包装紙を破り開ける。ビニールの袋も床に放り投げられて、バリバリと少々耳障りな音が部屋を満たす。ニールはその様子を横目で見ながらキッチンに足を進めた。

「刹那、ご飯作るから大人しく待ってるんだぞ」

刹那はぬいぐるみに夢中で返事などしない。その様子に苦笑しつつもご飯を作る時にべったりまとわりつかれなくて安心出来る、と胸を撫で下ろす。冷蔵庫から野菜を取り出そうと手を伸ばした時、リビングから刹那の声が聞こえた。

「ふぎーーっ!!」

「刹那!?」

何事かと後ろを振り返って見れば、ついさっき渡したぬいぐるみを鷲掴みにしてペンギンの首下に思いきり噛み付いているではないか。しかも床の上をゴロゴロと物凄い勢いで転がりながらそれをやっているのである。いつもはスリムな尻尾がもわっと太くなってぴくぴく揺れている。一体何事か、と頭が真っ白になったがパッケージの『仄かなマタタビフレーバー』の文字を思い出し、パソコンを立ち上げ検索サイトへ飛んで『猫 マタタビ』と入力して検索を始めた。その間も刹那はリビングで暴れている。検索結果の一番上に表示されているページをクリックして目を通す。

「えっと…『猫にマタタビを嗅がせると、なめる、頭をこすり付ける、体をくねらせたり、身悶える、よだれを垂らして恍惚状態になる』…。って、おいおい…」

リラックスどころじゃねえ逆効果じゃねえか!と一人で頭を抱え込むニールを他所に刹那はぬいぐるみとじゃれあっている。いや、じゃれあっているというには程遠い。ぬいぐるみの首をぎゅっと締め上げてお腹に齧り付くさまはまるで野生の猫が餌を捕食しているよう。一心不乱にぬいぐるみに噛み付く刹那は勢い良く転がるせいでショーツが丸見えだ。あられもない格好で飛び跳ねたりしているのである。とりあえず落ち着かせないと、とニールは包装紙を手に取って刹那の顔面にまで持って行き、少々強引にぬいぐるみを奪い取った。刹那は目の前のくしゃくしゃになっている包装紙に気を取られてそれと戯れ始めた。

「まさかこんな風になるとは…」

水色のペンギンのお腹には刹那の噛み付いた痕がしっかりと残っており、ほんの一瞬で傷だらけになってしまった。

「あーあ…マタタビの効果を勘違いしてたぜ。こんなに興奮するなんて思ってもなか…」

ニールは刹那を見て硬直した。包装紙に残るマタタビの匂いを嗅ぎながら床の上で大人しく横になっているのだ。その表情が、さっきとはまるで違う。

「はふ ぅん…」

とろんと蕩けた表情はまるで酒を飲んで酔ってしまったようだ。その様子は発情していた時とは違った、どこか弱っているようで妙な艶美さがあった。挑発的に体を見せ付けるのではなく、力なく外部からの刺激を抵抗なく受け入れているような感じである。

「せ、せつな…」

「なんか、くらくらする…」

頬を赤く染めて体の異常を訴える刹那が妙に可愛く見えニールの庇護欲をそそった。潤んだ赤い瞳に、だらしなく弛緩している肢体。こんなに脱力している刹那を見るのは初めてかも知れない。そんな痴態を見せる刹那に、ニールの理性が徐々に薄れ始めた所為か無性に抱きたいと思った。ニールは現れ始めた本能に従うまま、ぐったりとしている刹那をベッドまで運んでぬいぐるみを枕にして横たわらせた。マタタビの香りを嗅いでは脱力する刹那の上に馬乗りになったニールはYシャツをそっと脱がし始める。

「んん…何を、する…っ」

「気持ち良いことだよ。いつもの」

「ふあ…」

Yシャツをベッドの外に放り投げてニールは考え込んだ。マタタビに酔った刹那なんて珍しいんだから、いつもとは変わったことをしたいと。白いショーツだけを身に纏う刹那は枕のぬいぐるみの匂いを嗅いでは悶えている。勝手に体をくねらせて自分の世界に浸っているようだ。

「あ、そうだ」

「?」

ニールはベッドの横にある小さなサイドテーブルの引き出しを漁り始める。目当てのものはすぐ見つかったようでニールは刹那の方に振り返ってベッドに座る。マタタビ枕に顔を埋めている刹那の口もとにソレを運び優しく口の中に押し込んだ。

「んむぅ…」

「ちゃんと舐めないと駄目だぞ。根元までしっかりな」

アイスキャンディを食べる時のように、下から上へと丁寧に舐め上げているのは黒いバイブだった。言われた通り根元もぺろぺろと小さな舌で嘗め回していく刹那に、ニールはぞくぞくした。その光景を見ているだけで体が粟立つような強い興奮を覚えたのだ。バイブを嘗め回す様は自分のモノをしゃぶらせる時とまるで同じで、教えたことをしっかりと身に付けている刹那がより一層愛おしく感じた。

「…っよし、良い子だ刹那」

「、ぁう…」

刹那の口からバイブを抜き取ると、涎がつぅ、と垂れて臍あたりに付着した。白いショーツを横にずらしてまだ準備の整っていないソコへバイブと押し当てると、刹那が小さく身じろいだ。もしかしたら痛いのか、と顔を上げたが心配されている本人は相変わらずすっ呆けた顔したペンギン枕に執心しっ放しで宛がわれたものに対してさほど反応しなかった。気持ち良過ぎてイっても知らないからな、と一人ごちてニールは刹那の膣にバイブを差し込んだ。

「ひ、あ  ん」

「なんだ刹那、奥の方は濡れてたのか?」

「知らない…」

「そんな口利く奴はこうしてやる」

カチリ、とスイッチを入れると黒いバイブは低い羽音を立てて震え始めた。刹那は驚いてパッと半身を起き上がらせたがすぐにへにゃりとベッドに沈み込んだ。

「にゃっ…なに、これぇっ…」

「ああ、刹那はこれ使うの初めてなんだよな」

大人の玩具っていうんだよ。刹那は一層蕩けた表情をしてきているので、聞いてるのか聞いてないのかわからない。適当に返事をしたニールはバイブのスイッチが入った状態のままショーツを元に戻し、刹那の顔の上を跨ぐようにして圧し掛かる。膣のバイブは規則的にぐるんぐるんと回転して刹那の中を抉っていく。刹那の目の前でベルトを外しにかかると、その快感に気を取られながら気持ち良くて震える手でチャックを下ろし始める。中途半端にズボンを下ろしたかと思えば刹那は忙しなくボクサーパンツに手をかけてズルズルと引き摺り下ろしながらニールの足にしがみ付いた。

「っおい、そんなにがっつくな」

「に、っ」

「うわ、」

刹那にズボンを引っ張られた所為で膝立ちの体勢を崩したニールは刹那の上で四つん這いになってしまった。その拍子に勢い余って刹那の眼前で、パンツからぶるんと陰茎が飛び出させるハメになってしまう。滅多に見られない刹那の酔った姿に無意識のうちに興奮していたのかしっかりと堅さを持っている。それを下からじっと見上げている刹那はくんくんと匂いを嗅いだあと、なんの躊躇いもなく咥え込んだのだ。

「っ、刹那…!」

亀頭の先端の皮から舌を入れ込んで旋回するように舐めまわす。かと思いきや裏筋の部分だけを執拗に吸い上げたり、自分から喉の奥まで陰茎を差し込んで吸ったりしている。舌使いがいつもと違う、とニールは感じた。完璧にマタタビの匂いに酔っ払っている刹那はいつも以上に性に貪欲になっている。派手な音を立てて吸い上げると刹那の口の端から涎が溢れ喉元を伝い胸元に垂れていく。

「ちょっと待て刹那…!」

「やら…」

「やだじゃないってーの…っ」

刹那は制止の声を無視してニールの陰茎をしゃぶり続ける。刹那は竿をしごきながら皮を剥いて露出させた亀頭を口に含んで、ザラザラとした猫特有の舌で刺激した。その舌の感触で腰が砕けそうになったニールは刹那の頭を掴んで、無理矢理陰茎を引き抜いた。

「あーっもう!」

口の中から抜けていった陰茎を追いかけてこようとする刹那をベッドに押し付けて、バイブを素早く抜き取ると彼女の口に宛がった。舌足らずに喋りながら奉仕してくる刹那を心底可愛く感じて、早く中に収まりたいとニールはことを急いだ。

「こっち咥えてろ」

「にゅぅっ」

ニールと比べれば大きさに不満はあったものの刹那は大人しく舌を這わせた。一方のニールはショーツを取り払い、刹那の口淫で反り返った陰茎をゆっくりと刹那の膣に挿入していく。力が抜けているせいか中はとても柔らかく、真綿で包まれているような錯覚を覚えた。じっとり濡れているのにふわふわと柔らかいのだ。不思議な感触もマタタビの所為かとバイブを咥えている刹那を見る。こんな風に脱力してされるがままになっているのも良いもんだ、と腰を動かし始めた。

「んにゃあ…っ」

突き上げられて甘い声を出した刹那。思わず口からバイブを落としてしまう。手を伸ばそうにも気持ち良くて力が入らずニールに突かれるままに喘いでいる。足をM字開脚のように開かされた状態で奥の方まで掻き混ぜられると、途端に刹那の反応が良くなった。

「ひゃっ!」

「お、なんだここが良いのか」

開脚した足はそのままに腰を持ち上げて快感をやり過ごそうとしているが、逆効果になった。腰を突き出した所為でより奥までニールが侵入してしまい大きな快感を得て刹那は涙目で啼いた。

「にゃっ ああ…にーるそこ、だめえ…っ」

「嘘吐け。自分で擦り付けてる癖に」

「にゃぁ あああんっ!」

刹那の膣を陰茎でごりごりと掻き回していくと、気持ち良いポイントに当たる度に悲鳴をあげた。甲高い声があがるのに連動して膣もぎゅっと収縮してニールを包んだ。不規則に襲ってくる肉壁の波にニールの腰が戦慄いて、思わず出しそうになってしまう。気を抜いていたらたぶん達していただろう。刹那をイかせずに自分だけイくのは性に合わないので、ニールはスパートをかけて刹那の弱い部分を執拗に突き上げた。

「にっ、らめっいく…っにゃあん!」

「イっちまえ…っ刹那、うっ」

「ひゃっあああああん!」

腰をガタガタと震わせてシーツを掴みながら刹那は達し、それを追いかけて、ニールも我慢することなく中に出した。

「ったく…エロ過ぎるぜ刹那…」

「うにゃぁ…ごめんなさい…」

「褒めてんだ」

ゆっくり引き抜いた精液塗れの陰茎を刹那の口まで持って行くと、パクリと咥えた。汚れを半分ほど取った頃、徐に口を離して恍惚の表情でぽつりを呟く。

「にーるの、またたびのにおいがする…」

そう言って刹那は再びニールの陰茎に舌を這わせて丁寧に舐め上げるのだった。