動揺しなかったといえば嘘になる。朝食を作り終え、リビングで待つ刹那の所へ食器を持って行こうとしていた時だった。やけに静かだと思っていたら刹那はソファに顔を埋めて体を時折痙攣させ、自慰行為に耽っているではないか。薄々勘付いてはいたが敢えて触れないようにと心がけてきた刹那の体の状態。今、まさしく発情期で抑えきれない体の熱を拙いながらも、対処しようとしていた刹那。どうしようもない熱に体が悲鳴をあげたのかも知れなかった。切なげに喘ぐ刹那を見て、本能がニールの理性を突き破って表に出てきたのだろうか。まさかあんな事をするなんて思ってもいなかったニールは自分の行動に驚きを覚えつつも、後悔はしていなかった。


「んぅ…」


「刹那、」


ベッドの上で小さく唸って刹那が目を覚ました。しっかりと覚醒していない所為か、瞳がまだしっかりとニールを捉えられず焦点がウロウロと部屋中を彷徨った。


「おい、刹那大丈夫か」


「ぁ、ん にー る」


儚い声で名前を呼んで手を伸ばす刹那。ニールの服を掴む手は細く柔らかで、強く握ったら容易く折れてしまいそうな雰囲気を醸していて。――――やばい、な。刹那が先ほど意識を失う前に言った事が本心であるならば望むのであれば、これから行為に至ろうとする自分は自制が利くのだろうかと一抹の不安が過ぎる。不安が過ぎると同時にゾクゾクと体を駆け回る期待と好奇心。刹那が乱れる姿を想像して、興奮しているのだ。


「に る…」


「ん?」


「さっきの、…ゆめ…」


夢?夢を見たと思っているのだろうか。先ほどの、リビングで起きた出来事が夢だったと。その時刹那が空いている手で自分の着ているシャツを掴んだ。意味有り気に、下腹部付近を。淫らな夢を見たと羞恥しているのか、それともこの先を望んでの暗黙の意思表示なのか。どう見ても、後者だった。


「夢なんかじゃないさ」


否定を示す言葉。刹那の上に跨って額をコツンと密着させて刹那の体温を堪能する。ぴょこ、と小さく動いた猫耳に興味を持つニール。柔らかい和毛の集まりを唇で食むと刹那の体に如実に反応が現れた。


「ひにゃぁ…」


ひくりと体を竦ませてニールの胸にしがみつき、尻尾もくにゃっと頭を垂れた。その反応に心躍らせたニールは刹那を抱き上げて腕の中に抱き込む。掌で後頭部を包み込み先刻同様唇で耳を食み、空いた手は尻尾の付け根を弄る。


「にー、るぅっ やっだめ」


「気持ち良いだろ?」


体を弄られる度に体をひくつかせる刹那は涙声でニールを呼ぶ。合間合間に熱い、とかおかしくなっちゃう、とか可愛い悲鳴をあげてくれるのだ。ひとしきり弄ったと頃合を見て刹那を解放するニール。性感帯を弄られてふにゃふにゃになりながらも刹那はニールの手を取り「ここ、 指…」と舌足らずに行為を求めた。その挙動に腰から走るゾクゾクとした快感にニールは危うく達しそうになる。ただでさえ興奮しているのだ。無意識に誘ってくる刹那にニールは苦笑する。


「指も良いけどな?刹那」


「ひ、っ」


にゅるんと容易く侵入するニールの指。出し入れしながらゆっくりと刹那に語りかける。


「ここにはな、これを挿れるんだよ」


刹那の手首を取って導いた先、興奮しきって大きく屹立したニールの陰茎があった。初めて触れるソレに小さく息を呑んで掌に感じる熱に刹那は「あ、」と声をもらす。知識は無い。本能的に理解したのだ。お互いの、繋がるべき場所が何処なのかを。


「おっき、い…」


仄かに顔を赤らめて刹那はニールの陰茎を見つめる。その様子に早く繋がりたいとニールは思った。無言で徐に刹那の膝を持ち、足を開かせる。目指すその場所はぐずぐずにぬめっていて溢れ出す愛液は留まるところを知らずシーツに流れ落ちシミを作った。


「挿れるぞ」


「はぁっ…」


ひたりと触れ合った亀頭と刹那の陰唇。ぱっくりと口を開けている膣口の上には小さいながらも存在を主張する陰核。指でその辺りを撫でてやると膣口はきゅっと収縮して中から押し出されるように愛液が流れた。その流れを塞き止めるかのように亀頭を膣口に押し当てて徐々に力を込めていった。


「っ…」


「ひ、 にゃっにーる…!」


中に入ってくる異物の熱さに刹那は戦慄く。下半身から上ってくる感覚に悶え、細い肩を震わせている。ゆっくりと確実に入ってくる陰茎をにゅるにゅると締め上げる刹那の膣はひどく柔らかく頭がぼうっとするほどに心地よい。たまに湿った音が響いて刹那がひくりと反応する。と、不意に侵入が止まった。


「入った、か」


「ん、にーるの、奥まで っ」


体全体にまで侵食したむず痒い感覚に浅く息をする刹那。入ってきたものが自分の体温より高く感じて腹部が熱い気がする。そっと下腹部に手を遣った。


「、苦しいか?」


じっと自分を見つめて眉を顰めているニール。ニールの方が苦しそうと刹那は思ったが口にはせずに、問いかけに対して首を横に振っただけだった。


「あったかい、」


じんわりと浸透する温かさに刹那は蕩けた笑みを浮かべる。その笑みにつられるようにニールは刹那にキスをした。以前に勢いのままに重ねてしまった唇。その感触をちゃんと堪能するように食んでは触れて、触れては食んで。絡む舌を吸い上げれば喉の奥で声をもらす。キスに夢中になっている刹那の膣を柔らかに突き上げると突然の快感に体を反らせてビクついた。


「みゃ、っ ニーる…っ」


「刹那のナカ、すげぇ気持ち良い…っ」


上半身をぴったりとくっつけ合って、器用に腰を揺らめかせるニール。その動きに膣を抉られて刹那はあられもなく声をあげた。


「ひゃああっ!」


立て続けに責められて二人の結合部分から水っぽくて淫猥な音が部屋に響く。じゅぼ、とか空気を含んだが愛液刹那の最奥で掻き混ぜられて恥ずかしい音を出す。ごぴゅ、耳を塞ぎたくなるような音。そんな音にさえも興奮して刹那はニールを締め上げた。


「あ、っあっ にゃぁあっ!」


シーツを掴んで必死に快感を受け止める刹那。目からはポロポロと涙が溢れて、激しくなる動きにニールにしがみついて喘ぎながら言葉を紡ぐ。


「へ、変になっちゃ、 おかし いよぉっ…」


「どこが、おかしくなる って?」


「ひあ、お腹 苦しい、っのに  気持ちいい っ」


気持ちいいと、ハッキリと発せられた言葉。自分よりも幾分も体の小さな刹那が自分のものを受け止めて気持ちいいと、その体全部で感受してくれている。愛おしさが一気に増して、その感情を表すかのように動きは一層激しくなった。


「にー るぅっ ひゃめ、そこのクリクリ…っ!」


「ここはな、っ 女の子が一番 感じる所なん だよ…っ」


膣の中を犯されながら同時に陰核を摘まれて刹那の体は一気に絶頂に向かう。繋がったのならば、前後不覚に陥るほどイかせてやりたいとニールは密かに微笑んだ。膣の奥を亀頭で突かれながら陰核の根元を指の爪先で擦られて、刹那は限界を感じた。ジリジリと灼けるような快楽、一瞬の間にそれは解放され刹那の頭の天辺から足の先まで、体中に電流が走った。


「にゃ にゃっ、い にゃぁああ――――!」


「刹那…っ!」


刹那が達すると同時に、ニールも膣の中で精を吐き出した。断続的に吐き出される感覚に息を震わせる刹那はニールのものを咥えたままの陰部に指を伸ばす。


「…刹那…?」


「はぁ…ニーるの、おっきいのが、」


入ってる、と言って結合部分に指を遣る。掌に触れた陰核に先ほどの事を思い出し、指先で弄り出す刹那にニールの陰茎は一瞬で大きさを取り戻した。


「ふ、んん…」


コリコリと陰核を撫でる刹那は恍惚とした表情でニールを見上げる。
繋がった部分からじわりと漏れ出すニールの精液を指で掬って摺り込むようにして陰核を撫でた。刹那にしてみればただ単に滑りを良くするためにしたのだが、ニールにとってみれば己の吐き出したものを摺り込むなど催淫以外のなにものでもなかった。残り僅かだった理性という箍が完全に外れたニールは刹那の膣から陰茎を抜き出し、刹那の細い体を背後から抱きこむようにして腕の中に閉じ込める。一瞬の出来事に声をあげる暇さえなかった刹那だったが、再び進入してくる熱を素直に受け止めて艶っぽい吐息を吐いた。


「あっにーる また入っ…」


「こうした方が、ちゃんと見えると思ってさ、」


ニールに背中を向けた状態の刹那―――所謂、背面座位状態の繋がった場所に手鏡を差し出すニールは柔らかい和毛で覆われた耳元で優しく囁いた。その鏡に映し出された光景は目を見張るもので。淡い桃色をした刹那の陰部の肉を掻き分けるようにニールの大きな陰茎がピタリと隙間なく合致していて、その結合部分の真上に弄られ少し赤くなってちょこんと顔を出す陰核。写った光景から目を逸らす事が出来ずにいると、ニールが刹那の手を取りそこに手を導く。


「っ!」


「ほら、さっき見たいに出来るだろ?」


促されるまま、陰核に指を添える刹那。視界から飛び込んできた淫猥な光景の中で指が陰核に触れた瞬間、大きな波が体を飲み込んだ。指が動く度に視界の中の陰核もくにゅくにゅと踊り、膣の中でジリジリと大きさを増すニールの陰茎が激しく上下に動き出す。その快感に大きく体を反らせた刹那は息も絶え絶えに喘いだ。ニール、だめ、動いちゃ、熱くなって壊れちゃう。最早言葉として紡げないほどに気を遣っている刹那はニールの二度目の射精を膣の最奥で感じながら意識を飛ばした。