普段はパイロットスーツに覆い隠されている柔らかな肌も、いつもなら聞くことも出来ない甘い声も、己の眼前にそれらが晒されている事実にロックオンは酷く優越感を覚えた。


「ロッ、クオ ン……っ」


たったの数時間前の話だ。互いが互いの心を伝えて、相手に思われいる事を知った時にロックオンの心臓は破裂しそうな程、歓喜に震えた。そして、腕に閉じ込めて抱き締めて、抵抗が弱いのを良い事に甘く睦言を囁きながら事に及んだ。制止の声も突っぱねる華奢な腕も、ロックオンをそそる要因になるだけだった。


「……やっ」


緩やかなカーブを描く刹那の胸は酷く柔らかく、ロックオンは思わず軽く噛みついた。最初は鎖骨辺りに、徐々に降下して胸の頂きに辿り着いた。


「気持ちいいか?」


敏感に反応するそこに舌を這わせると刹那は小鳥の囀りの様な声をあげた。


「ひゃぁ…っ!」


引ける腰に腕を巻き付けて抱き寄せてロックオンは執拗に刹那の乳首を責めた。緩い快感のむず痒さに、刹那はロックオンの髪の裾を掴んで軽く引っ張る。と、途端に視界が反転して刹那の目の前にはロックオンと天井が見えた。


「刹那、好きだ」


再び囁かれた甘い言葉に刹那は震えた。刹那にとって愛を囁かれるのは初めてで気恥ずかしさに目を伏せる。


「目、逸らすなよ」


「ん、ゃっ」


顔を掌で包み込んで正面を向かせても目は逸らされたままだったが、桃色に染まる頬を見てロックオンは微笑んだ。


「凄く綺麗だ」


「ロックオン……」


優しく重なる唇は、徐々に激しさを増してロックオンの舌が刹那の口内に侵入する。初めての事に体を震わせる刹那だったが、ロックオンの与える快感に溺れていった。たどたどしく舌を絡めさせてくる刹那の唇を甘噛みするように貪り合った。刹那は息苦しさも感じられない程に溺れていた。唇を離されて、ようやく息をするのを思い出した。はふはふと浅く息をする刹那の目尻にちゅ、と可愛い音をたててキスを降らせた。


「…あっ!」


ショーツ越しに陰部を撫でられた刹那は驚きの声を上げた。ロックオンの指先が縦のラインを往復して、もう片方の掌で柔らかな内股を触っている。撫でられているだけなのに、腹部に熱が集まって熱い。もっと、と体が勝手に望んでいるようで、刹那は自分を恥ずかしく思った。きゅうっと目を閉じて温い快感に打ち勝とうと必死に声を押し殺す。その様子に気が付いたロックオンは少し強めに、陰部を押す。


「ふ、っ…」


「声、出せよ。苦しいだろうが」


「で、も…」


「刹那」


「いやっ…」


何がそんなに嫌なのか、顔を赤らめている所を見れば羞恥に心が燃え上がっているのはすぐ解る。声が聞かれるのが嫌なのか。はたまた他に理由があるのか。


「…なん、か…」


要らぬ憶測をして、それを訪ねるか否かと逡巡していたロックオンに、刹那はぽつりと呟いた。一言、それだけを言うのにもだいぶ躊躇っているようで視線があちこちに飛ぶ。


「どうした?」


「ロックオン、なんか、…体がおかしい…」


涙目になって、肩を小さく震わせている刹那は体の異常を訴えた。その間にも、ロックオンの掌は刹那の体を這い回っていて、腰の辺りを通過した時、刹那の体がひくりと跳ね上がって鼻から抜けるような声を発した。


「ロックオンが、触った所が…熱くて…、あっ 苦しい…おかしいんだ。どうにかなってしまう…」


脱ぎ掛けているロックオンの上着を掴んで熱をどうにかしようと悶える。ぽろぽろと赤い瞳から涙が溢れ出して頬を伝った。恥ずかしさも胎内に宿るどうしようも無い熱も、体験したことなどない。目の前にいるロックオンにしがみ付くのがやっとで熱をどうにかして欲しいと息を弾ませた。


「ごめんな、刹那。苦しいよな」


「ロックオ、…ふ、ぅうっ」


動きを止めていた手が、徐にショーツの端を摘まんで覆い隠すものが無くなった陰部に直接触れた。直に感じたロックオンの指に刹那は一瞬息を忘れた。しなやかな指がにゅると膣内に侵入して、それと同時に包皮と共に陰核を押し潰される。びりびりと快感が駆け巡って、一気に体中が熱くなる。頭の天辺から足の爪先まで、仕様もない熱が皮膚をじりじりと覆い尽くしていく。


「ひ、やあぁあ…」


「イけば、少し楽になるからな」


「ろっく、…だめ あ っいや あ…ああっ!」


ちゅぷちゅぷと水音をたてて出入りする指に与えられた衝撃に、刹那は背中を反らせて達した。まだ中にある指を忙しなく締め付けてその余韻に浸っている。ロックオンは刹那の締め付けを体感して、指でさえもこんなに気持ち良く感じるのかと己を挿入した時の快感を想像した。押し入ってしまいたい衝動に駆られて、指を性急に引き抜いくとたっぷりと刹那の愛液が付着していた。履いていたショーツは役割を果たしていない程に濡れきっていて、刹那の体の準備が整ったことを示していた。


「挿入れるぞ…」


「はぁっ…ろっくおん…んっ」


押し当てられた亀頭は刹那の膣口の狭さに容易く挿入は出来ず、亀頭を飲み込むのに相当時間がかかる。広げられる感覚に刹那は時折、無意識的に強請るような声を出していた。先端が入ってしまえばあとの茎の部分は簡単に刹那の膣に収まっていった。半分くらい飲み込んだ時に、刹那の口から「痛い」とはっきり発された。


「ろっくおん、痛い…っ」


「刹那」


「い、 たい」


痛みを堪えるように、自分の手を握り込む刹那。指先が白むほどに力んでいる。それだけ力んでいれば痛くないものも痛くなってしまうではないか。ロックオンは握り拳を作っている刹那の手を取って手を開かせた。


「傷、ついちまうだろ?」


掌に薄く残る爪の痕に、キスをする。安心したのか体の力が抜けて締め付けが少し柔らかくなったのを見計らってロックオンは一気に刹那の奥まで突き進んだ。


「う、ひゃ、っ…!」


奥までぴったりと重なり合った陰茎をきゅんと締め上げる刹那の膣は、入り口はきつく締まっていて中は柔らかい肉が蠕動している。はぁ、と色っぽい吐息を漏らしたロックオンは口元を緩めてこりゃヤバイ、と苦笑した。予想以上に気持ち良い。我慢することなく中で吐き出しすことが出来たら、と思うと早くも体が疼いた。


「…もう、痛くないか?」


「…っ…ん」


頷くのが精一杯で、痛くないことを伝えた。挿入され、体全体でロックオンを感じ取る刹那は、はぁはぁと呼吸を早めた。痛みなど最早どこかへ飛んでいった。代わりに体に圧し掛かって来たのは先程よりも強い快感。体の震えが止まらない。早くなる鼓動を鎮めようと息をすればするほどロックオンを感じてしまって、体の芯まで快感漬けになってしまいそうで、恐怖さえ感じられた。


「動いて良いか…?」


「あ、ぁ、っ…!ろ、っくおん、だめ ひゃぅぅうっ」


返事など、聞く気はない。動かないと刹那も辛いのは解っているロックオンは構わずゆらゆらと腰を揺らした。ひくんひくんと不規則に体を跳ねさせて、訳の解らないほどに愛撫を感受した。初めてとは思えぬほどに陰部から愛液を溢れさせ、突かれる度に部屋に喘ぎ声が響き渡る。鶯舌と呼ぶにふさわしい、清らかな声だった。いつの間にやら離れた二人の手。ロックオンの手は刹那の腰をしっかりと掴んで淫らな音を出して膣内を掻き回し、刹那は大き過ぎる快感をどうにかしようとシーツを握り締める。


「あ、っだめぇっろっくおん…!あぅっああ、あ、」


「っ…本当、ヤバイ、刹那…気持ち良すぎ…」


潤った結合部分はじゅぶじゅぶと音を出し、互いの体液が混ざり合わさってシーツに滴り落ちた。一心不乱に腰を打ち付けられて刹那の意識は朦朧となる寸前だったが、ロックオンの儚い吐息と共に名前を呼ばれた事がキッカケでしっかりとロックオンを視界に写す。いとおしい、その感情が溢れ出して刹那の体が勝手に動いた。


「ふ、ああっん、ろっくお ん…ろっくおん……!」


「っ!刹那、ぁっ」


ロックオンは目を奪われた。苦しそうに喘いでいた刹那が突然、ロックオンの腰の動きに合わせて自ら腰を揺らめかせているのだ。たどたどしく、遠慮がちに腰を揺らす様は美麗だった。善い所に先端が当るらしくその度にぎゅっと膣が収縮し、刹那の口からは甲高い悲鳴が洩れる。激しく動いた所為で気が付けば二人とも何も身に付けておらず、体温をずっと近くで感じている。ずぐ、という感覚が刹那の最奥を突いた。


「はひっ、ああ、あ、っそこ…そこ…!」


「へ、ぇ…ここ、そんなに気持ち良い?」


同じ場所をピンポイントで突き上げれば刹那はその痩躯を捩って快感に身悶える。逃げるような仕種にロックオンは加虐心を掻き立てられた。


「さっきは 自分から、当ててた癖に、…っ」


「や、ア あんっ、ごめ ひゃんっごめな、さ、ああっだめぇっ」


卑猥、という言葉がぴったりだった。そこはだめだと口では言いながらも、体は非常に正直で相も変わらず腰を振って好きな所を突き当てられて悦んでいる。


「中、すごく熱い ぜ?っ、ひくひく動いて…いやらしいなぁ…」


「そ、な事…!言わない、でっ んん…ひゃぁああっ!」


「はは、今の顔、すげぇ可愛い…」


羞恥に染まった表情と色香が混ざってとんでもない魅惑の雰囲気を漂わせる刹那に、ロックオンの下半身に熱が篭もり始めた。と同時に自分でも解るほど刹那の胎内で大きくなった。


「い、ろっくお…!そんな 大き…!」


「悪ぃ、は、刹那がそんな顔すっから…」


頬を撫でてやると、赤い瞳と視線が絡み合う。ロックオンはこんな情に塗れた瞳を見るのは始めてだと考えていた。自分をじい、と見詰めている彼にしがみ付いて刹那は耳元で一言、囁いた。


「ろっくおん 好き……っ」


ああ、「好き」だという言葉がここまで己の心を打つものなのかとロックオンは一杯になった。世界で一番幸せだとさえ思えてくる。


「刹那、刹那……っ!」


「っ!あ、あああっ ろ っくお ん…!」


駆け巡る大きな快感に身を委ねてロックオンと刹那は同時に達した。相当な量の精液を注がれその感覚に恍惚とする刹那と、がっちり繋がっている部分から溢れ出す白濁の液体を見て刹那を繋がれたのだと実感するロックオン。脱力感と達成感にこつりと額を合わせて互いの顔を見遣った。ロックオンは、じわりと胸中に温かいものを感じて満たされた気分になった。


「刹那、ありがとう…」


「…?ろっくお、 何…」


達した余韻の所為で蕩けた瞳をしている刹那は今にも寝てしまいそうだった。あまりの眠気に刹那の耳にはロックオンの言葉が届いていないようだった。ロックオンにはその全てがいとおしく、手放したくないと独占欲が湧き上がる。刹那を上から見下ろしていたロックオンはごろりとベッドに横たわって腕の中に刹那を抱き込んで髪を梳いた。


「んぅ…」


「おやすみ刹那」


くぐもった眠そうな声を聞いてロックオンは声をかける。ゆっくりと閉じられた瞼、深くなる吐息に刹那が眠りに就いた事を示していた。涙を流した所為で仄かに赤くなっている目元に慈しむ様に、今日何度目とも知れぬキスをする。心も体も満たされてくる。ぬるま湯に浸かっているような、心地良さが体全体を包んでいた。「好き」という言葉が、愛すべき人から発せられるとこんなにも幸せなものかと、ロックオンも襲い来る眠気に抗うことなく目を閉じた。