刹那のそこは酷くぬかるんでいた。ほんの少し指を動かしただけで、泥の中に突っ込んだ足を勢いよく引き抜いた時のような音が聞こえてくる。

「ふふ、濡れてる」

「お、まえが、いやらしく触るから…っ!」

「反応する刹那も十分いやらしいんだけど?」

「……っあ…!」

ゆっくりと奥まで差し込んだ指を左右に動かすと、むず痒さから刹那は声を漏らす。狭い所為で指が途中で攣りそうになったが、なんとも可愛らしいその反応を見ているとついつい熱が入ってしまうものだ。未発達なそこを痛めないように性急な動きは徹底的に避けた。刹那自身の体が自然とニールの指を受け入れるようになるまで、じっくりとしつこく捏ね回す。

「ん、…っ……っ」

「声、何で我慢しちゃうの」

「は 、ぅ…っ」

「さっきまでは気にも留めてなかった癖に」

意地でも声は上げない、と唇を噛み締めている刹那を見てニールはこれじゃただの根競べじゃねえかと不満に感じた。が、勝負に勝ってしまえば良いのだと口唇を吊り上げた。初心な刹那に、万が一でも負けるわけなどないのだから。

「―っ!」

「意地っ張りだな、刹那は」

眉間に深い皺を作って息を殺す刹那は、下腹部で蠢くニールの指の動きに吐息を漏らす。どうしようもない感覚に頭の中心がぼんやりとしてきて、思考が止まりそうになっていく。回らない頭でどうにかこの状況から逃げ出す方法を考えていると、激しさなど一切ない律動と共にニールの声が耳元で響いた。

「素直になるまでずーっとこうだからな?」

「し、知るか…っ!  んっ」

「強情っつかなんつーか…本当頑固な、お前」

だからこそ陥落させ甲斐があるってもんだけどな。ニールは楽しそうに言うと刹那の体を羽交い絞めにして弱いところを益々ねちっこく責めあげる。しつこい動きに鳥肌が一瞬だけ立った。

「う、っん…」

腹の奥深く、そのごく一部を探られる度に妙な感覚が走る。先ほどのようなものとは明らかに違う、地を這うようにして体を巡るそれは唐突に刹那を苦しめ始めた。

「―っあ…っ あう…っあ、」

「刹那?気持ち良い?」

「や、め  指やめ…っ! あっ」

遅効性の毒のように体を回ってきた快感に刹那はいよいよ声を抑えられなくなってしまった。ようやくか、と思ったのはニールだった。解れた襞をぬちぬちと撫で回す作業を続けて手首がそろそろ悲鳴を上げそうになった頃だった。狙撃手が仕事道具の手を痛めつけて何をしている、と冷静な自分がぎゃんぎゃん喚いていたが刹那を前にしては我慢がならなかった。そもそもこれくらいでイカれてしまう訳でもないのだから、たまには少しくらい羽目を外したって良いだろう。刹那にとってはいい迷惑だったかも知れないが話を持ちかけたのはあちらである。ニールに責められる謂れはこれっぽっちもないのだ。腕の中でしゃくり上げそうになりながら悶える刹那は、か細い嬌声を上げる。

「い、や また、イっ」

「まだまだ、これからだろ」





刹那はベッドのシーツに包まりながら、涼しい顔をしている相方を睨み上げた。小ざっぱりとした表情でにこやかに刹那を見下ろすニールは冷たい視線もどこ吹く風、といった様子である。

「変質者め…」

「何と呼ばれようが気にしないぜ?」

「異常者。変態狙撃手。貴様ほど歪んだ性癖の持ち主はいない」

「はいはい。刹那が可愛かったから仕方ないだ…痛いから蹴るのやめろっ!」

「言葉で駄目なら物理で行けとティエリアから聞いた!」

「お前ら仲悪い癖に何でこういうところでは意気投合してんだ!」