にょたせぷ1






「伏見さんなんで女の子じゃないんだろう」

秋山がほんとうに深刻そうに溜息をついた横でまたか、と弁財が溜息をついた。秋山と弁財は長い付き合いなのだけれど、弁財はどうしても秋山のこの趣味だけはいつまでたっても慣れない。

「おまえ伏見さんが好きなんだろう?」
「うん」
「じゃあもう・・・その・・・同性愛者卒業でいいんじゃないか」
「なに言ってるの伏見さんの股間にダモクレスの剣がぶら下がってるって想像しただけで吐きそうなんだけど。とりあえず伏見さんのダモクレスがダウンして胸に副長のあんこをつめよう。話はそれからだ」
「わるかった。秋山。俺が悪かったからこの話はここまでにしよう」

弁財は公の場では「わたし」という一人称を使っていたが秋山の前ではどうしても「俺」という一人称が出てしまう。秋山は散々「そんな男みたいな一人称やめよう」と悲しそうな顔をするのだけれど、こればっかりはどうしようもない。

秋山は昔から同性愛者だった。それもバイだとかどちらもいけるだとかそういう生易しいものではなく、もっとガチな方。こないだテレビを見ながら真顔で「伏見さんが謎のストレインによって女体化したあとにこの世界から男が全員消滅しないかな」などと呟いていた。弁財は本気で秋山の頭が心配になった。

「なんで伏見さん男なんだろう。伏見さんのダモクレス腐り落ちないかな・・・。あと伏見さん絶対処女だ・・・処女の伏見さん本気でぐちゃぐちゃにしたい・・・女の子だったら・・・」
「お前、今休憩時間とはいえ仕事中だぞ。誰かに聞かれでもしたらどうするんだ」
「わたしが同性愛者なのとかもうみんな知ってるし五島もレズだし」
「そういう問題じゃない!」

弁財はまたひとつ溜息をついてコーヒーをすすった。日高にでも見られたら「弁財さん、カフェインばっかとってるとカップ小さくなりますよ」と言われそうで執務室ではなかなか口にできない。大きなお世話だ。そんなことを言う暇があったらその胸をわけていただきたい。

「秋山・・・もう五島でいいじゃないか・・・胸も大きいし、美人だし、仕事もできるし・・・」
「わたし無理。五島だけは無理。巨乳は好きだし美人も好きだし見た目だけなら五島がどストライクなんだけど五島のあの笑い方とか内心なに考えてるかわかんないとこがもう生理的に無理でワンナイトラブすら無理。ていうか五島絶対処女じゃない。処女じゃない女とかもう滅びればいい」
「お前のその極端な思考どうにかしないと本気で危ないと思うんだが・・・。それにそれを言ったらお前だって処女じゃないだろう」
「は?弁財何言ってんの?わたし処女だよ。男のダモクレスなんていれたことないし男になんて指一本触れさせたことないよ」
「そのダモクレスっていう表現どうかと思うぞ・・・。ああ、処女ってそういうことか。てっきり性的な経験がある人のことだと・・・」
「女同士のセックスはもっとこう夢と希望に満ち溢れてるんだよ。欲望渦巻く男をまじえたセックスと一緒にしないで」
「ああ・・・うん・・・ごめん・・・」
「ああもうどっかに処女で女の子でいい匂いがする伏見さんおちてないかなぁもう伏見さんが女の子だったらぐちゃぐちゃにし・・・」
「秋山?それ以上言ったらさすがに怒るからな」

弁財はどうしてこう秋山は伏見がからむと節操がなくなるのかと本気で溜息をついた。それからカップに残ったコーヒーを一気に飲み干し、日高の胸が少し縮まないかなぁと思った。女の子同士なんてそんなものだ。


END


あ、はい、色々すみません

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