五島と日高






日高は息苦しさに目が覚めた。息がうまくできなくて、どうしてだろうとうろうろと視線を彷徨わせると、自分に向かって伸びている腕に気がついた。それを辿っていくと両手が日高の首に絡みついていて、その根元には五島の顔があった。ぺたぺたとその手を触って、ちゃんと確認しても、どうやら自分は五島に首を絞められているらしいということしか認識できなくて、とにかく苦しかった。どうしてこんな仕打ちを受けているのか全く身に覚えがない。寝る前に喧嘩をしたわけでもないしいつもどおり「おやすみ」と言って眠りについただけだった。何か変なことをしただろうかと考えているうちに五島の指にきりきりと力がこもっていって、そのぶんだけ日高は酸素を奪われた。呆然と五島を見上げるとその顔は少しだけ笑みのかたちに歪んでいて、それを見たときになんだかどうしようもない怒りが湧き上がってきた。

日高はとにかく息が苦しい、と、五島を突き飛ばした。すると五島のあんなに力が篭っていた指はあっさりと離れてしまって、それが少しおかしかった。日高はひとしきりむせたあと、どうにも五島が許せなくて尻餅をついた格好のままの五島を押し倒し、その上に馬乗りになって「このやろう」と五島の首を締めた。そうしなければいけないような気がしたのだ。ここで五島をどうにかしてしまわないとまた自分が危ないような、そんなひりひりとした焦燥に駆られていた。五島の首は冷たかった。ひんやりとしていて、陶器のようになめらかだった。作り物めいているそれをなんの手加減もなしに両手で締め上げると、五島の眉間に少しだけ皺が寄った。けれど、それだけだ。それがなんだか日高を馬鹿にしているようで、許せなくて、日高はさらにぎりぎりと指に力を込める。そうすると五島の唇がうっすらと割れて、そこから小さく空気が漏れた。多分最後の空気だ。五島は空気を求めるように唇を動かす。けれど、それはよく見ると言葉を紡いでいるようだった。吐息もままならない唇で、五島は「それでいいんだよ」とつぶやいて、それが最後。ゆっくりと諦めたように瞼が落ちる。呼吸が止まる。それが、最後。


日高が目を覚ましたとき、そこは五島のベッドの中だった。じっとりとイヤな汗をかいている。息苦しさに汗を拭おうとした腕が、何かに当たった。それは自分の首に巻きついていて、日高はそれをぺたぺたと触って確認する。腕だ。作り物めいた腕が、自分の首を絞めている。その先には当たり前のように五島の嫌な顔があって、日高、は、



END


元ネタ:脊髄さんの夢
ツイッターで脊髄さんが変な夢を見たらしくその内容を五日五に変換したり設定つけくわえたりして書かせてもらいました。
ありがとうございます。あとごめん、なんかこんなんで。


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