秋山と弁財






仕事が終わって部屋へ帰ると、弁財は無言で部屋にこもってしまった。秋山が夕食のときに一度声をかけたのだけれど、返事がない。これは日高が弁財の地雷を踏んでしまったんだろうなぁと秋山は溜息をついた。日高は悪くない。悪いのは道明寺だ。あの野郎どうしてくれようと思うが、それよりとにかく弁財だ。

「弁財、入っていいか」
「…今は一人にしてくれないか」
「…そう、言われると弱いんだよなぁ…。どうにもならなくなったら呼べよ。ほんとうに。なんかあったなら話聞くし」
「…ありがとう」

秋山はどうしたものか、と今日何回目かわからない溜息をついた。二人は高校までは同じだったのだが、大学はさすがに違う大学へ進んでいた。高校までは荒れていたのだが、環境が変われば色々と変わるらしい。もとより喧嘩は買うばかりだったので、そのせいかもしれない。少なくとも秋山は少し実家から離れた大学へ通っていたので見た目も合間ってもう喧嘩を売られることはなかったのだが、弁財は地元の大学だったので大学生になってからもちょくちょく喧嘩をふっかけられていたらしい。それでも避けられるものは避けていた。しかし相手方がどうにも根に持つタイプの人間だったらしく、大学に入学して半年ほどしたあとに弁財は集団で取り囲まれてぼこぼこにされたらしい。あとからその話を聞いて地元に帰ってきた秋山が弁財に「大丈夫だったのか」と聞いたのだが、「手ひどくやられたよ」と言って笑うばかりだった。そのときなにがあったのか詳しく聞くことはしなかったし、できなかったのだけれど、弁財の腰のあたりには酷い火傷ができていた。風呂に入るときはタオルで隠れる位置だったし、着替えの時もうまく隠しているのだが、それは明らかに煙草を何度か押し付けられた跡だった。それから弁財は密室や閉所が苦手になっていたようだったし、よっぽど酷い目に遭ったらしい。一学年が終わると、弁財は秋山のいる大学に転入した。そうして、ふたりしてセプター4に就職して、今に至る。

ままならないものだと思った。秋山は仕方なく自室に戻り、煙草に火をつけた。そうして、そのほの赤い先端を見つめて、溜息をついた。多分自分ではダメなのだろうなぁと。


END


私がシリーズ書くとちょいちょいこういうシリアス展開になるからいけない。
ていうか弁財さんがうつくしすぎてもう辛いんだけど…

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