秋山と伏見





「秋山って元ヤンだったのか?」

伏見に唐突にそう言われて、秋山は食べていた喉飴を喉につまらせた。喉にいい飴なのに逆効果になってしまっている。そのあとどうにかそれを飲み下し、げほげほと盛大にむせ返った。

「ふしみさ…っ!それどこで!?」
「いや、さっき日高が秋山さんと弁財さんが元ヤンだったってほんとっすか?って弁財に聞いてて」
「な…!」
「で、ホントっぽいな。弁財もなんかコーヒー吹き出してたし」
「いや、その、なんていうか、その」
「んだよ。別に偏見持ってるわけじゃねーよ。俺だって元ヤンみたいなもんだし」
「伏見さんはどっちかっていうと現役…いや、なんでもないです。まぁ、そう、なんですけど…黒歴史なんで…」
「ていうかよく元ヤンのくせに吠舞羅ならともかくセプター4にこようと思ったよな。そこらへんやっぱ真面目だったんだろ、どうせ」
「はぁ…まぁ、色々ありまして」

秋山はどうせこんなくだらないことを言いふらすのは道明寺あたりだろう、と内心舌打ちをした。このことは秋山と弁財以外知らないはずなのに、道明寺はどこからそんな情報を入手してきたんだ。

「まぁお前が元ヤンだろうがなんだろうが別に興味ねーけど、なんか意外だな」
「はぁ…そう、ですか。そう言われるとなんとも言えないのですが」
「つーか弁財、あいつ様子おかしいんだけど。あとから受け取った書類、ベタなミスしてたし。根性焼きとなんか関係あんの?」

伏見が茶化すようなことを言うと、珍しく、秋山の眼光が鋭くなった。伏見が「なんだよ」というと、それはたちまちに掻き消えてしまうのだけれど。

「…いえ、その、このこと、俺はいいんですけど、弁財の前では絶対に言わないでもらいたいんですが…」
「…まぁ、別に興味ねーし」
「ありがとうございます」

秋山はにっこりと人のいい笑みを浮かべて、自分のデスクへ戻ってしまった。伏見は先程の目つきを思い出し、舌打ちをして「元ヤンが」と呟いた。そうして、自分の根性焼きのような火傷の跡を思い出して、イライラした。確かに気分のいいものではないかもしれないなぁと。


END

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