四十三日目





バスケ部の活動は基本的に毎日あるが、講義やバイトの関係で毎日は出られない人が多いのも事実である。実際緑間は講義や演習が他よりも多く火曜と木曜は出られないし、黄瀬は仕事が入ると休むことが多い。青峰も学科で体育実習があると基本的に練習は免除されるし、紫原の学科は実験が金曜に入っているので、時間が押すと遅れてきたり、休んだりする。そんなこんなで全員が集まって練習できる日は少なく、キセキのメンバーで揃って家に帰るということ自体稀だった。けれど今日はめずらしく全員が部活に顔を出し、同じ時刻に練習を終えたので揃って帰宅しているところだった。

「なんか久々っすね!こういうの!」

黄瀬がはしゃいだ様子でそう言うと、赤司もふわりと笑った。

「わりとみんな忙しくしていることが多かったからね」
「人数もいることだ、ついでに生活用品の買い出しにいくのだよ。そろそろ色々と不足してきた」

大学から家に帰る途中にストリートバスケ用のコートを備えた公園がある。みながみななんとなく通りかかるときはいつもそこに視線がいってしまうのだが、大抵小学生や中学生が遊んでいるそこに今日はなぜかやたら張り切った様子の大柄な男と、それなりに背丈のある大人びた男が1on1をしていた。やたら気合の入ったプレイをしているな、と思いながらそれぞれ眺めていたのだが、どうにも見覚えがある。

「…火神君?」
「あ、室ちんだ!」

黒子がつぶやき、紫原がはたと気づいた声を上げると、コートにいた二人も「あ」と驚いた顔になる。二人はプレイを一旦やめて、「なんだなんだ」と6人のところへ駆け寄ってきた。

「久しぶりだな!なんでこんなとこいんだよ黒子!」

少し髪の伸びた火神が、しかし以前と変わらない様子で明るい声をあげた。軽く息が弾んでいて、しばらく氷室と二人でプレイしていたことが伺えた。

「火神君こそ。君、アメリカにいたんじゃなかったですか?」
「いや、ちょっとこっちで用事があってタツヤとこっち戻ってきてたんだよ!ていうか…え、なんつーの…こう、すげーメンバーだな…」

火神は黒子の後ろや横にいる五人をちらりと見て少したじろいだ。

「ああ、アツシたちは今同棲してるんだろう?たまにアツシからメール貰うから、それで聞いてはいたんだけど、こうして見ると本当に圧巻だね」

少し語弊のあることを氷室が言うと、紫原がそれを訂正した。

「同棲じゃなくてハウスシェアね。同棲だと全然意味違うよ。ていうか室ちん来るなら言ってよー」
「ああ、ごめんごめん。急な話だったから」

火神も氷室も高校を卒業してからはアメリカへ渡っていたのだが、どうやら急な用事で日本へ帰ってきていたらしい。偶然見つけたこのコートでストリートバスケをしていたらしいが、そこで偶然この面子と顔を合わせることになるとは夢にも思わない。

「火神っち久々っすね、ほんと。俺今大学で英米言語文化やってるんで色々教えて欲しいっす!」
「えーべー?なんの話だ?ていうかお前大学生になったのか!すげー頭いいんじゃねぇか!」

火神はいまだに馬鹿が治っていないらしい。黄瀬がどう返したものかと思っていると、横から青峰がちゃちゃをいれてきた。

「馬鹿、コイツは推薦だ。そして俺も推薦で受かっておんなじ大学通ってるぜ。今の時代馬鹿でも大学入れんだよ。それより久々に1on1やろうぜ」

青峰がそう言うと、火神がなんだか歯切れのわるい顔になった。

「いや、それが…バスケしたいのはやまやまなんだけどよ。ちょっとそろそろ時間がないっていうか…」
「あん?なんだ、もうアメリカ帰るのかよ」
「いや、そうじゃなくてよ、俺、こっちくる間友達の家に泊めてもらう予定だったんだよ。でもその友達が家賃滞納しすぎて追い出されたって昨日連絡あって…そんときもう飛行機乗る直前でさ。これから今日泊まるとこ探しにいかねーといけねーんだ」

火神は少し困ったような顔になり、頭の後ろを掻いた。黒子が「ああ、それなら…」と言おうとしてから、ちらりと赤司の方を見た。先程から会話に入ってこようとしていなかった赤司は、「なんだい?」と首をかしげる。

「その、僕の部屋に寝てもらうんで、火神君、一晩くらい泊められないですかね」
「…そうだね、構わないんじゃないか。別に、テツヤがそうしたいなら、そうすればいい」

どこか刺のあるような言い方なのだが、黒子は「そうですか」と、すこしほっとしたような顔になった。

「だ、そうです。火神君、今日は家に泊まっていきませんか?」
「いいのか?…たすかる、けど」

火神はさすがに気が引けるのか、青峰や黄瀬はともかく、緑間や紫原をちらりと見た。緑間は「…赤司や黒子がそういうなら構わないのだよ」と。

「室ちんも泊まるの?」
「いや、俺はホテルを予約してるから」

氷室がそう言うと、紫原は残念そうにした。

「なんだ、つまんない」
「また今度お願いするよ」

紫原はじっと黒子に見られて、少し拗ねたような顔になる。そうしてから、「まぁ、いいんじゃないの」と。

「そっか!悪いけど今晩だけ世話んなる!」

火神が無邪気な顔でそう言って笑うと、赤司は嘆息した。なんだか騒がしい夜になりそうだなぁと。


END


リクエスト頂いたキセキとアメリカ組が遭遇する話でした。
人数多くなると会話文とか多くなって色々大変ですね…
ごちゃごちゃしちゃっててすみません。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -