二百二十二日目






毎週月、火、木、金は黄瀬と黒子が英語の講義を受ける日である。英語の講義は黄瀬と黒子の学部の場合はいつも2コマ目に入っていた。黒子は毎回出席しているが、黄瀬は仕事の関係で休んだりしていて、そろそろ出席日数が足りなくなる。

「黄瀬君、今日の講義、あと一回も休めませんよ」
「うっわかってるっす。仕事も一応調節してもらってるんで期末は受けられるかと…」
「期末だけ受けられたって、勉強しないと危ないんじゃないですか?君の成績の場合」
「そうなんすけどー」

授業終わりに二人でそんなことを話しながら学食へ向かっていた。黄瀬と黒子は最近用事がなければよく二人で学食へ行く。2コマ目が終わってしまえば昼食の時間、ということもあるからだ。ラインで繋がってからは水曜日もちょくちょく二人で昼食を食べに行っている。場所は一番近くにある中央食堂である。昼の時間帯はかなり混むが、背に腹は代えられない。コンビニで何か買って部室で食べるという手もあるにはあるのだけれど、コンビニ弁当では栄養が偏ってしまう。その点学食は野菜から何から取り揃えてあって便利だ。黄瀬はヘルシーにサバの味噌煮定食を頼んでいた。それにサラダをプラスするあたりプロ意識が高い。黒子は適当にごはんと味噌汁と揚げだし豆腐、切干大根をチョイスした。

二人は支払を先に済ませ、なんとか空いている席を見つけるとそこへ腰かけた。四人掛けのテーブルのため二人で占拠するのはいつも気が引けるのだけれど、そこは仕方ないだろう。

「そういえば、今日は赤司っち以外は午前あるっすよね。昼食とかにこないんすか?あの三人は」
「ああ、青峰くんたちならよく工学部食堂の方でみかけますよ。そちらのほうが空いているとかなんとか」
「え、青峰っちと紫原っちはともかく、緑間っちの学部からは神がかって遠いじゃないっすか」
「まぁ、緑間君は静かなのが好きなんでしょう」
「三人で食べたりするんすかねー」
「それはないと思います」

中央食堂はがやがやとうるさかったので、二人の声もいつもより大きかった。黄瀬は今度工学部食堂にも行ってみようなんて思いながら、黒子に「テスト前になったらノート貸して欲しいんすけど、英語の」とお願いをした。黒子は「まぁ、かまいませんよ」と。

「ノートだけでいいんですか?」
「うっできれば解説も…」
「時間があればいいですけど」
「申し訳ないっす」
「いえ、君も大変ですよね。学業と部活と仕事の両立で。この場合両立なんでしょうか。三立と言った方が正しいんでしょうか」
「うーん。どうなんすかねぇ。よくわかんないっすけど。あ、あと俺明日仕事あるから英語の講義出れないっす!」
「そうですか。じゃあ君のぶんのレジュメももらっておきます」
「いつもありがとうっす」
「いえ、ついでのようなものなので。ところで仕事ってなんの仕事ですか?」
「いや…えっと…恥ずかしいんすけど、こないだ企業でやってる賞の新人俳優賞とって…それの授賞式っす」
「…すごいじゃないですか。どうして黙ってたんですか?」
「いや、なんか恥ずかしくって。アカデミー賞みたいな有名なやつじゃないんで…」
「それでも君の頑張りが評価されてるってことじゃないですか。そういえば、ドラマ出演とか映画出演とかしてましたしね」
「来週は初の写真集も出るっすよ!」
「あ、そういう宣伝はいらないんで」
「ひどいっ」

黄瀬はひどいひどいとサバの味噌煮を貪り食べた。黒子はこれは今度なにかしらお祝いをしてあげなければいけないなあと考えながら、揚げだし豆腐に箸を入れる。そういえば、はじめは黄瀬と昼食をとるということも少なかった。後期に入ってからである。こんなに学内で顔を合わせるようになったのは。周囲からの視線もいくつか感じている。やはり黄瀬はどこへ行っても人気者、芸能人なのだなぁと少し思い知らされた気分だった。しかし黄瀬はそこに驕ることなく平凡な黒子と接してくる。そういうところ好感が持てなくもない。本人には決して言わないけれど。


END

リクエストいただいてた「黄瀬と黒子がなかよしな話」でした。
リクエストありがとうございました。

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