二百十二日目






文化祭は大盛況のうちに終わり、閉会より早めに全員で後片付けを行った。最終的には写真を撮るだけの屋台になったわけだが、それでも客の入りは多く、最後まで繁盛していた。そのために売上もかなりの額になり、紫原の提案したみんなで遊園地の実現の他に、今日のうちにとりあえずゲームセンターで打ち上げをしてしまおうという話になった。発案者は黄瀬だ。男だけでもプリクラがとれるゲームセンターが近くにあるらしい。こないだ青峰と二人でゲームをしに行った場所だ。

「プリクラとかどうでもいいからゲームしようぜゲーム」
「ひどい!こういうのは思い出に残すのが大事なんスよ!?」
「ゲームセンターなんて場所は久々に来たのだよ」
「高尾君と行ったことがあるんですか?僕も付き合いでなければ来ませんね」
「俺も久々かもー音ゲーしようよ音ゲー」
「おとげー…?僕は初めて来たな…こういう娯楽施設には疎いものだから」

みんなはプリクラだけ撮って帰るのもあれだから、と、近くにあった音ゲーコーナーに足を運び、それをプレイして遊ぶことにした。幸いなことに小銭ならたくさんあるのだ。ここにくるまでに大半を赤司がATMでお札に変えてしまったのだけれど。

「ユビート?って読むんですかねこれ。僕の好きな曲が入ってます」

黒子はとりあえず近くにあったそのゲーム機で遊ぶことにしたようだった。近くに同じ機械があったので、黄瀬もそれに小銭を入れて、同じ曲を選ぶ。そうすれば自然と対戦相手に選ばれるらしかった。このゲームはどうやら3×3マスの四角いボタンをリズムに合わせて光る順に押していく、というゲームらしい。単純なゲームだが全国オンラインで他人と対戦できるのでなかなかに楽しい。黒子ははじめてなので難易度は低めに設定し、黄瀬もそれに倣った。

「負けないっスよ!俺このゲーム得意なんス!」
「はぁ、僕ははじめてなのでお手柔らかに…あ、はじまりましたね」

黒子ははじめてらしく何度かボタンを押し間違えたり、押し遅れたりしたがなんとか合格点、黄瀬の方は得意と言うだけあって高得点をたたき出した。黒子はちょっとくやしかったらしく、「二曲目も同じの選んでください」と闘争心むき出しだ。

二人がユビートで対戦している間に、青峰はこないだやって楽しかったらしいダンレボを指して、「誰かあれで対戦しようぜ」と。

「あ、じゃあ俺やるー」

乗ってきたのは紫原だった。興味があったらしい。機材が紫原の体重に持ちこたえることができるのかはなかなかに疑問だったが、そこは一応許容体重内だったらしい。二人は知っている曲を選ぶと、定位置についた。このゲームはリズムに合わせて脚でパネルを踏んでいく、というゲームで、かなり身体を動かすタイプのゲームだ。一日中立ちっぱなしだったので、少し身体も動かしたかったのだろう。

「これ室ちんとやったことあるんだけどね、室ちんすごいんだよ。上半身も踊ってるの。やばいよね」
「なんだそれ恥ずかしいな」
「でしょー」

そんなことを言いながらも対戦がスタート。二人はわりと高難易度を選んでいたために激しく身体を動かすことになる。しかしそこは運動神経の塊である二人らしく、二人とも高得点をマークした。わずかな差で紫原が勝利し、青峰が悔しかったのか「今度は俺が得意な曲で!」と新しく曲を入れている。

それぞれに盛り上がっている四人を見ながら、ゲーセン初心者な赤司と緑間は、とりあえず面白そうなもの、とあたりを見回してみた。すると見たことのある太鼓が目につく。

「とりあえずあれでもやらないか」
「そうだな。あれならまぁ見たことはある」

二人が選んだのは太鼓の達人というゲームだった。かなり普及しているタイプの音ゲーで、これなら、と思ったらしい。二人は小銭をそれぞれゲーム機に入れると、操作に戸惑いながらもどうにかプレイまで行き着いた。チュートリアルまできちんと見るあたり二人らしい。二人が選んだのはどちらも知っている夏祭りという曲だったのだが、緑間がかなり苦戦しているのを尻目に赤司はパーフェクト。ここでも赤司の勝負強さは出るらしい。緑間は「クリア失敗」と出た自分の画面をにらんで、「もう一回なのだよ!」と。赤司は「いや、これ三曲まで選べるみたいだが」と冷静に返している。

そのあとも対戦相手を入れ替えつつ全員で音ゲーを心行くまで堪能した。赤司はやるゲームやるゲームでパーフェクトをたたき出すし、黄瀬もそれを見てコピーしてはパーフェクトを出していた。青峰は主に身体を動かす系のゲームを楽しみ、最終的に画面の前で某アイドルユニットのダンスを踊っていた。目の毒だ。紫原も器用なもので、いろんなゲームをしては高得点を出していたし、ドラムを叩く音ゲーはなかなかに様になっていた。ひどかったのは緑間で、どのゲームをやってもクリアできていなかった。黒子と対戦しても負ける始末。リズム感のなさが露呈してしまっていた。黒子はよくも悪くも平均点。オンラインで平均点を見られるものがあればぴったり平均点をマークしていた。ここまでくるともうそういう才能なのではないかと思えてしまう。

全員が満足した、という顔になる頃にはもう夕食の時間になっていて、慌てて六人は帰宅した。その帰り道、黄瀬が「あ」と気づいた顔になる。

「プリクラ撮るの忘れた」

END


リクエストいただいてた「キセキで音ゲーをする話」でした。
リクエストありがとうございました。

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