二百八日目






今週の土日は待ちに待った文化祭だった。キセキの面々は今日のためにと準備した装飾で朝から屋台のテントを飾りつけながら、わいわいと客は来るか、どれくらい儲かるものなのか、という話をしていた。ちなみに売り物はフランクフルトに決定した。フランクフルトならば安く仕入れたそれをバーベキューコンロで焼けばいいだけなので簡単である。仕入れから値段設定は赤司がほぼほぼやってくれたので、半分以上売り切ればとりあえずとんとんにはなる計算だ。それ以上が利益となる。そして屋台名は「イケメンのフランクフルト」だった。ぎりぎりにもほどがある。ネーミングは紫原担当だった。ちょっとくらいインパクトがあった方が客があつまるという彼の言い分だったが、冷静になって考えてみるとこれはひどい。それからシフトについてだが、これは黒子の提案だった。さすがバイト経験があるだけはある。シフトは一日目は時間が短いこともあって、全員がお昼休み以外はフルタイムで稼働する。これは焼き加減だとか場の雰囲気とかになれる目的もあった。文化祭は基本的に二日目が本番なのだ。二日目のシフトは基本的に四人で屋台を回し、残り二人は休憩、という手筈になっていた。休憩の組み合わせはまず、午前前半が赤司と緑間、昼頃に黄瀬と青峰、午後に黒子と紫原、とした。ピーク時あたりに会計計算の早い二人と調理に慣れた二人が配置されている。さらには黄瀬を外して少し調整を図ろうという意図まであるのだから、シフトを考えた赤司は本当に計算高い。テントの組み立ては青峰と紫原が、装飾は黄瀬担当だった。緑間は炭火を起こしている。そんなこんなで文化祭一日目は幕を開けた。

結果から言えば客の入りは上々だった。むしろ在庫のほとんどを売り切ってしまったので追加発注をしなければならないくらいだった。それもこれも黄瀬のアイディアで、フランクフルトを買ったお客さんには好きなイケメンと一緒に写真を撮れる、というサービスをつけたからだ。黄瀬が一番人気だったのだが、緑間や紫原にもちょくちょく指名が入った。赤司と青峰が次点で、黒子はミスディレクションのため一件も入らなかった。また、全員が全員、黄瀬がプロデュースした少し恰好のいい服を着ていた。全員のクロゼットから、前日のうちに黄瀬が二日分の衣装を見繕ったのだ。コスプレや女装でなくてほんとうによかった。一番驚かれたのは黒子の恰好だった。普段とは違う、モノトーンちっくでこ洒落た雰囲気に、キセキの面々は少し意外そうな顔つきをした。「黒ちんそういう恰好も似合うね」だとか「なんかほんとにテツかわからないけどな」だとか「いいんじゃないっスか!?黒子っちもイケメンの仲間入りっスよ!」だとか「涼太と買い物に行ったのかい?なかなか似合っているじゃないか」だとか「悪くはないのだよ」と、各自それぞれに感想を述べた。黒子は照れ臭いのか素なのか、「はぁ、そうですか」と返しただけだったが。

一日目は開場と同時にそれなりの人で学内がごった返し、朝ごはん替わりにでもするのかフランクフルトの売り上げは上々だった。途中ちょっとしたアクシデントやミスはいくつかあったが、大きな問題はなく、会計担当と焼き担当、客寄せ担当に分かれてうまくやっている。会計は基本的にインテリ組が行い、黒子は目立たないので焼き担当、青峰も人相が悪いので焼き担当、黄瀬が客寄せをしていた。さすがはこないだドラマで濡れ場まで演じた芸能人だけあって、黄瀬が話しかけるとたいていの女性は黄色い悲鳴をあげてイケメンのフランクフルトを買ってくれた。下ネタでしかないけれど。事務所に許可はとっているらしく、写真もオーケー。ただしデジカメ不可でケータイでの写真のみだ。

焼き担当の青峰は額に手ぬぐいを巻いて、ガテン系だったし、黒子は純情そうだったし、緑間はインテリイケメンで、赤司は御曹司で、黄瀬は正統派、そして紫原は2メートルということでなかなかに種類の違うイケメンがそろっていたこともあり一日目は大盛況。客層は主に女性だったが、ふざけた男性客もがっつり捕まえて、売り上げはもちろん黒字だった。問題だったのは写真を撮るのにはじめ手間取ってしまい、大行列をこさえてしまったことくらいか。それ以外はなんとか終えて、文化祭一日目は終了。明日への課題はいかにして写真を早く撮るか、のみとなった。


END


リクエストいただいてた「キセキで学園祭でわちゃわちゃする話」でした。
二日目に続きます。

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