四十八日目






「なんでこの季節にコタツなんて出しているのだよ」

リビングのど真ん中にどんと置かれたコタツを前にして、緑間は眼鏡のブリッジを指で押し上げた。

「なんか、配送業者がミスしちゃったらしくて、引越し当初に届くはずだったんすけど、のびのびになってやっと今日届いたんすよ!まだちょっと寒い日とかあるし、今日とかちょっと肌寒かったから仕舞っちゃう前に一回くらい試運転しとこうと思って」

黄瀬はコタツに入ってぬくぬくしながらそれに答えた。見ると紫原もコタツの中に入っている。身体が大きいせいで胸のあたりまで入っていると脚はコタツの外に出てしまっていた。それは本当に温かいのかと問いただしたくなるような格好だ。まぁ悪くはないだろうと緑間もそれに入ろうとするのだけれど、どうやら全ての面に先客がいるらしい。気づかなかったのだが、紫原の脚のある面には黒子が寝ていたし、黄瀬の正面にはこれまた青峰が寝転がっていた。わりと大きめのコタツなのだが、大の男が4人も入っているとなると少々手狭に感じてしまう。仕方なく黄瀬の隣に腰を下ろすのだけれど、そうすると身体がぴったりと寄り添うようになってしまって、なんだか落ち着かなかった。

「おや、コタツ、届いたのか」

見るとリビングの入口の方に赤司が立っていた。赤司はこの件をきちんと把握していたらしく、季節外れのコタツを見ても緑間ほど驚くことはなかった。それがなんだか恥ずかしくて、緑間は奥歯を噛み締める。

「なんだか少し小さかったみたいだね。僕の入るところがないじゃないか」
「・・・僕の隣ならどうにかなるんじゃないですか。紫原君、ちょっと起きてもらっていいですか?」
「えー・・・うーん・・・赤ちんのためならまぁいっか」

紫原が起き上がると黒子のところはぽっかりとスペースができた。そこに赤司が腰を下ろすのだが、いよいよコタツは手狭になってしまう。

「おい!黄瀬ぇ!脚邪魔だ!無駄になげぇんだよ!」
「いたっ!痛い!青峰っち蹴んないでほしいっす!」
「おい、青峰!それは俺の脚なのだよ!」
「いたた、ちょっとーみどちんそれは俺の脚ー」
「青峰くん、それ僕の脚なんですけど・・・」
「・・・今僕の脚を蹴ったのは涼太かな。ちょっと鋏とか・・・ないだろうか」
「え、ちょっ!違うっす!緑間っちっす!」
「おい!俺を生贄にするな!」
「だーからーみどちんそれ俺の脚!」

コタツをはさんでぎゃあぎゃあ言い合っていると、力尽きたらしい黒子がぱたんと後ろに倒れてしまった。

「なんか、熱いです」

たしかに天板ががたんがたんと浮き上がるほど動いてしまったせいか、無駄に汗をかいてしまっていた。青峰と紫原も続いて後ろへ倒れると、黄瀬、緑間とそれに続き、赤司もそうした。なんだか疲れた。疲れたけれど、暖かくて、それがよかった。

「もうコタツの季節じゃないっすよね」
「楽しみは来年にとっておけばいいのだよ」
「これ楽しいかぁ?」
「なんかいいじゃないですか、みんなでコタツ囲むの」
「もっと大きいのが欲しいー」
「掘りごたつとかにしないと難しいかな・・・」

もう季節は春から初夏に移り変わろうとしている。コタツは今日が終わる前にはもう押入れの中に入れられてしまうのだろう。業者を少し恨みながら、そろって、くすくすと笑った。今からもう冬が待ち遠しくて仕方なかったものだから。


END


リクエスト頂いてたコタツの話です!
季節外れですみません!

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