六日目





大学生の朝は遅い。学部によって異なるが、時間割によっては毎朝九時に起きれば十分間に合う時間帯だったり、午後からしか講義が入っていなかったりする。赤司だけは毎朝五時に起きてランニングをしていたが、他は自分が起きる時間までぐっすりである。赤司の次に早いのが緑間で、六時頃には起き出して毎朝の朝ごはんをとりあえず六人分作ってくれる。別に誰が決めた、というわけではないのだが、どうにも緑間は毎朝しっかり朝食を食べたいらしい。他に任せておくよりは自分がやった方が確実だし、自分の分だけ作るのは気が引けるのか、全員分毎朝用意してくれているのだ。そんな緑間の次に起きだしてくるのが準備に時間のかかる黄瀬で、それと同じくらいに黒子が朝ごはんにつられて出てくる。青峰と紫原は基本的にギリギリまで出てこない。紫原は毎朝赤司が起こしているので問題ないのだが、青峰はよく寝坊をしては講義に遅刻していた。

一年生は一般教養科目といって、専門科目の他に基礎的な科目を学部の分け隔てなく取得しなければいけない。黒子と赤司、黄瀬は文系なのでだいたい同じ科目を取得していたし、紫原と緑間はひとつ科目が被っていた。青峰は課程特有の変則的な時間割で、黒子と一般教養科目がひとつ被っているだけだ。単位が取りやすいと人気がある講義で、青峰はいつも後ろの方で寝ている。朝一番の講義なので大変なのだが、青峰はともかく黒子はまだ遅刻をしたことがなかった。

その講義がある朝、いつもならば起きてくるだろう時間帯に、青峰は起きてこなかった。黒子はおやと思ったが、自分の準備に忙しかったので気にしなかった。しかし黒子が家を出るときにも青峰は起きてこない。黒子は仕方がなく青峰の部屋をノックした。

「青峰くん、講義に遅れてしまいますよ」

そう呼びかけてみるも返事はない。どうせまだ寝ているのだろうと思った黒子は、失礼しますと一応断ってからドアを開けた。すると案の定気持ち良さそうに鼾をかき、ダイナミックな寝相のせいでベッドからずり落ちそうになっている青峰が目に入ってくる。黒子はここで起こさないとなんだか後ろ暗い気がして、面倒だとは思いつつも青峰くん、青峰くんと体をゆすった。それでも青峰が起きるのを渋ったので黒子は容赦なくベッドからシーツを引っ張った。すると派手な音をたてて青峰が床に転がり落ちる。

「いてぇ!!」
「青峰くん、講義に遅れますよ」
「…は?…まじかよ!!」

時計を見た青峰があ、これはもうだめだ、寝よう、という顔をしたので、黒子が青峰の頭にチョップを入れる。同期の仲間がダークサイドへ落ちていくのを見ているだけ、というのは気分が悪いものだ。

「出席点100パーセントなんですからちゃんと出ないとだめです。はやく準備してください」
「一回くらい大丈夫だって」
「だめです。行きましょう」
「へいへい」

青峰は渋々ながらごそごそと着替え出す。黒子はちらりと時計を見たが、もう間に合いそうになかった。これならば青峰に付き合っても変わらないだろうと腹をくくる。これで黒子が先に出たなら、青峰はしめしめと惰眠を貪るに違いなかったからだ。せっかくの無遅刻無欠席が、これでパーだ。人知れず溜息をつきながらも、まあこんな日があってもいいか、と思った。大学生なんてそんなものだ。


END


このあと青峰は講義室に入るとき教授に「君はいつも遅刻してくるね」と小言をくらう羽目になるけど黒子はその間にするっと入室して事なきを得たりとかしてますきっと。

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