三十一日目





「コーヒーのいれかた、ですか?」

青峰が黒子に「コーヒーのいれかた知らねぇ?」と聞くと、黒子は驚いた様子でそう返した。青峰は途端になんだか恥ずかしくなり、「なんだよ」とけんか腰になってしまう。

「いえ、すみません。でも青峰君コーヒー嫌いですよね」
「…最近好きになったんだよ」
「そうですか、まぁ、いいです。コーヒーのいれかたですよね」

黒子は青峰をキッチンへ引っ張っていった。そうしてまずケトルを火にかけ、戸棚からコーヒーフィルターとドリッパーを取り出す。

「あ、なんかコーヒー三種類もありますよ。どれにします?」
「…この、ブルーなんちゃらってやつ」
「ブルーマウンテンブレンドですね。あれ、こんなのありましたっけ。緑間君嫌いなはずなのに。赤司君でしょうか」

黒子はおかしいなぁと首をひねる。そうして青峰をちらりと見るが、青峰は「知らねーよ」という顔をした。

「まぁいいです。まずですね、このコーヒーフィルターの端っこを折り返します。で、広げて、ドリッパーっていう、この茶色いプラスチックの器具に差し込みます。そこにだいたいコーヒースプーンで一杯くらいのコーヒー豆をいれて、お湯を注ぐだけです。お湯は変に端を伝わらせたりせず、真ん中に落とします」

黒子の説明が一通り終わったあたりで、ケトルがなった。黒子が実際にお湯を落とすと、コーヒーのいい匂いがふわりと広がる。丁寧に落とされるお湯はなんだかとてもうつくしかった。芸術作品が生まれようとしているみたいに、青峰には感じられる。

「豆が新鮮だとこうして真ん中から膨らみます。こぼさないように気を付けてください」

黒子は十分な量がドリップしおわると、ドリッパーを流しに置いた。

「はい、これで完成です。簡単ですよね」
「おお、まぁな」
「僕はコーヒーあまり飲まないのでいらないです。青峰くんどうぞ」
「まじか。砂糖どこだっけ」
「そこの戸棚です。ミルクもあります」
「おー」
「黄瀬君喜んでくれるといいですね」
「おー…あ?」
「わかりやすすぎるんですよ、青峰君は」

いたずらっぽく笑う黒子に殺意を覚えながら、青峰は出来上がったコーヒーに角砂糖を三つ、ミルクを二つ落とした。適当にかき混ぜて口をつけると、べっとりとしただらしない甘さが舌にへばりついて、なんだか気持ち悪かった。


END


なんかこの連載だと青峰がわりと黄瀬大好きですね


-->
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -