カワイイはつくれる






※黄瀬が女装してます


















綺麗にベースを塗って、コンシーラーでくすみをかくし、人形なんじゃないかというほど毛穴のない肌を作り上げる。頬にはベビーピンクのチークをさして、目にはキラキラのアイシャドウ。細い細いラインできっちり目を強調して、バサバサした重たいつけまつげをつけた。唇はぷるんぷるんになるグロスで仕上げたら、黄瀬は本当に女の子のようだった。メイクさんもたくさんたくさん誉めてくれて、黄瀬も実際そこらの女よりはずっと可愛いだろうなぁと思った。尖った顎はふわふわのボブヘアで隠されて、筋肉質な肢体はタイツとサイハイブーツ、長袖ジャケットできっちり隠した。柔らかな曲線は流石に描けないが、それなりに見える。ヒールを履けば、憧れの190センチ台だった。ああこれが青峰の見る景色なんだなぁとしみじみする。雑誌の企画だったが、女の子はいつもこんな手間隙かけてカワイイを作っているのだとうんざりする思いだった。いくつかインタビューをうけて、カワイイポージングで撮影をして、たくさんのカワイイカワイイコールを受けた。そうするとあ
あ自分はカワイイんだなぁと思えて、なんだか変なテンションになってくる。その変なテンションのままスタッフさんになんでか「どうしても見せたい友達がいるんですが」と申し出てしまい、衣装とカツラを後日ちゃんと返すという約束と、特集記事に応じるという約束でその格好のまま青峰の家に行った。なんだか不安と期待のない交ぜになったような気持ちでインターホンを押すと、寝ていたらしい黒のスウェット姿の青峰がだるそうに顔を出した。

「…なにやってんだよ」
「雑誌の企画で女装したんすよ!!」

とにかく恥ずかしいからあがれよと青峰の部屋に通される。わりと綺麗に整頓されているのは黄瀬がよく遊びにくるからなのだろうか。そう思うとなんだか可愛らしいようで自然と笑みがこぼれた。

「可愛いでしょ?」
「キモい。そのしゃべり方やめろ」
「メイクさんにも大好評だったんすよ!!」
「そうかよ」

青峰は思い付いたように黄瀬に手をのばした。探るような指で、ジャケットの中、胸に触られて、さらには無遠慮に揉まれ、黄瀬は思わず赤面してしまう。

「なんだよつまんねーな」
「セクハラ!!セクハラっすよ!!」
「お前男だろ」

まぁそうっすけど、と黄瀬は唇を尖らせる。その唇がぬらぬらと光っていて、青峰は「キスもできねーなぁ」と黄瀬の髪の毛を触った。人口なのか天然なのかわからない艶をもった髪の毛がさらりと揺れた。

「お前ほんと男でよかったなぁ。お前が女なら胸ねーしうるせーしめんどくせーし唇気持ちわりーしで絶対無理」
「酷いっす」
「誉めてんだろ」
「青峰っち女の子にモテないでしょ」
「うるせぇよ。…ああでもお前が女だったら無理やり力で押さえ付けて処女切って股関節外れるくらい犯して泣きわめく口に指つっこんで散々もてあそんだ挙げ句にあっさり捨てたりとか楽しいだろうなぁ」
「…サイテーっすね」
「でもお前今ぞくぞくしたろ」

予行練習しとくか?と青峰は黄瀬のべたべたになった唇をべろりと舐めた。黄瀬は男だったので全力で青峰の腹を蹴り逃走することも可能だったが、黄瀬はやはり黄瀬なので、服とカツラは返さないといけないものだからとそれだけシワにならないよう汚れないようと部屋の隅にかけて、照明を落とした。変に浮いた化粧が滑稽だ。


end





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